ブッカー少佐はわたしをみつめて、少し照れたようにはにかんだ。彼の言葉はFAF語というべき言語だ。英語を基にしているが、形容詞は少なく、省けるものは省いて、簡潔で高速だった。合理的だが非人間的だ。
(『戦闘妖精・雪風<改>』P318)
今週の『Newsweek』誌の表紙、「英語じゃなくてGlob・ish 語彙も表現もシンプルなグロービッシュ=簡易型英語が世界の新たな共通語に」と書かれているのをみて、まず思い出したのが上に引用したくだりだった。
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雪風のパイロットが人間とうまくコミュニケートできないのをこの耳で聞いた。彼は母国語を忘れてしまったかのようだった。それを使えばなんということもなかっただろうに。それとも彼は、人間にもどってしまうのがこわかったのだろうか?
(『戦闘妖精・雪風<改>』P322)
『雪風』に描写されたこの状況と、まずそれぞれに母語があり、その上で国際共通語としてグロービッシュがあるという現実とは、もちろん大きく異なる。だが、FAF語がコンピュータ然としたコミュニケーションのツールであるように、グロービッシュもまたコンピュータを介したインターネットによる国際コミュニケーションと無縁ではない。現代を考えるために、今あえて『戦闘妖精・雪風』を読み返すのは意義あることではないだろうか。
……え? そう思うならシリーズ最新作の『アンブロークンアロー』を読めって? 面目ない。