警官のプロ根性

仕事で、西新井駅西口から徒歩5分ほどの場所まで、車輪のモニュメントの撮影に行った。そこはかつて東武鉄道の西新井工場があった場所で、「モニュメントの向こうに現役の列車が走る」という構図を狙った。
しかし、下り列車でないと列車が十分な大きさに写らないし、東急や営団の車両ではダメ。東武の車両でも、ステンレス地に紫帯のみの車両では絵として弱いので、オレンジ顔の50050系か特急の100系200系が望ましい。
ところがそうした車両が来ると、まるで計ったかのように車や自転車が通りがかって台無しにされる。そんなこんなで40,50分もカメラを提げてその場に張り付けになった。
すると、向こうのほうのカーブで、気まぐれに車を停めて人の運転を邪魔していた警官のひとりが、それに飽きたのかこちらにやってきた。
「ご近所の方ですか?」「違います」「何を撮っているんですか?」(無言で被写体を指差す)「(再び)何を撮っているんですか?」「見てわかりませんか?」「わからないです」「(デジカメのモニタを見せながら)その車輪」「これは珍しいものなんですか」「(珍しいとかそういう問題ではない、モニュメントとしてそこにある時点で既に意味があるのだ…といっても詮無き事なので無言)」
こんな無為なやり取りをして、警官はまたカーブのほうへ戻っていった。
ア ホ か 。
犯罪者の立場になって考えてみろ。すぐそこに制服警官が二人もいるのに、表通りに面した公園の入り口に、身を隠すでもなく長時間立っているわけ無いだろ。
私の行動に犯罪性を感じたわけではなかったのなら、なおさら「アホか」である。それはつまり「なんとなく興味をもったから声を掛けた」のだ。小学生かよ。
私は結局、何も答えていないも同然だったが、警官はそれ以上なにも質問できなかったし、なにもできなかった(されたらたまらないが)。だったら最初からこっちにくるな。まったく、全く無駄な行動だ。
いったい、彼らの仕事は何なのだろう。私のすぐ横には引っ越し屋のトラックが2台停まっていた。そこは丁字路の交差点の中だったから、標識が無かろうが駐停禁である。許可を取っていたとも思えない。言い逃れのしようが無い道交法違反だ。ところが警官は、その明らかな犯罪行為を無視して……というかそもそも駐車違反だと気付いてもいないのだろう……走っている車を何となく停めてみたり、ただ写真を撮っているだけの善良な一般市民に職質をしたり。
連中は要するに、ただ「仕事をしてますよ」というポーズを取りたいだけなのだ。これを税金泥棒と言わずしてなんと言おうか。
ただ一点だけ、彼らのプロ根性を感じた行動があった。15時になると、その時間ピッタリに二人とも立ち去ったのだ。それが規定の時間だったのだろう。ああ、無駄な仕事は一切しない、これこそプロフェッショナル! 休日にわざわざ西新井まで繰り出して、ノーギャラの撮影に時間を費やす私は大いに恥じ入った次第である。