リメイク版『プリズナーNo.6』

観た。論外。「数々の謎が散りばめられている」「難解」なのではなく、ただ「思わせぶりが投げっ放し」「無意味」というだけ。とにかく物語の核が定まっていない。No.6とNo.2それぞれの、当面の目的が何かさえ判然としないのでは付き合いきれない。

なお、この感想は見返さずに記憶だけで書いている。なので見落としているところや誤認がある可能性もある、と予めお断りしておく。二度と見る気がしないんだから許して欲しい。

私が観た第4話は、「村」の結婚相談所が「瞬間マッチング婚」なるシステムに基づいて紹介してきた女性とNo.6とが、なんだかんだでいい感じになっていくというお話。「ソウルメイト」とか言ってるし、ああ、統一協会的な状況を描いて管理社会の欺瞞を描くのね、というつもりで観ていると、なんだかどうもそうではなく、その女性を通してNo.6が過去を取り戻していく話らしい。

そういやリメイク版ではNo.6は記憶喪失だとかきいたな、じゃあNo.2の目的はその記憶を遠回しに刺激することなのか、と思うがどうもそうではないらしく、No.2は11-12なるお稚児さんをあちこち連れ回したり、奥さんが寝てる横で若い女に手を出したりでお盛んな様子。

それはそれとして、No.6は3歳くらいの子供がいる幸せそうな夫婦を訪ねて「君たちを見ていると瞬間マッチング婚も悪くないと思うよ」とか言うんですが、その子供がいきなり大穴に転落するという不慮の事故で死亡。一転不幸のどん底に陥り、夫婦関係もギクシャクしてくる。でもこの事故、瞬間マッチング婚の不備だとか、その他もろもろの村の社会システムとかとは全く無関係で、何を描きたいんだかサッパリわからん。

それはそれとして(また「それはそれとして」だが、拙いのは私の要約ではなく作品のほうだと強く主張する)、子供が落ちた穴だ。村には現在「気候の影響」で、地面にいきなりポッカリと巨大な縦穴が生じる事件が起きているのだが、これがまた物語と噛み合わない。「対策には豚の呼気が有効だとわかりました。一家に一匹豚を飼いましょう」てな感じで「ほらほら、ナンセンスでしょ? 豚だよブタ、面白いでしょ、ほら笑って笑って!」という製作者の声が聞こえてきそうな展開になったり、「この穴は人々の不安から生まれるのだ」とかNo.2が思わせぶりなことを言ったりするのだが、「だからそれは結局何なのよ」で、いい加減イライラしてくる。

落っこちた子供? あれもただ落ちただけ。子供なりに何かの意志に突き動かされて、とか、実は背景には何者かの策略が、とか、落ちた底には実は……という展開も無し。「この穴は外の世界に通じているのでは」とNo.6の言及もひと言あったが、それも何の答えもないまま後には語られなくなる。

んで、最後に種明かし的に「瞬間マッチング婚で選ばれる相手はDNAが似通っていて云々」というNo.2の台詞があって、それって近親婚じゃねえの? というツッコミより前に「待てやコラ、No.6の過去をめぐる話じゃなかったのかよ!? 相手の女とは『外の世界で一夜を過ごしたことがある』ことが重要だったんじゃないの!??」と、置いてけぼり感を喰らわされて幕。ていうかNo.2は一体何がやりたいんだ。

かように、クソつまらないなどと言ったら世の排泄物の皆様が気を悪くしそうなリメイク版『プリズナーNo.6』だが、唯一、オープニングに登場するインプレッサSTiは目を引いた。スバル車がこんな形で海外ドラマにフィーチャーされるとは。ロータスセブンの後継がインプレッサという例は他にないだろう。



(2012-01-05追加)
MXで始まって、検索でくる人も多いので関連記事へのリンクを作っておく。
「2010-06-29 「プリズナーNo.6」という娯楽作」