リメイク版「プリズナーNo.6」総括

MXではまだ4話目が終わったところだけど、個人的には全話見終えたのでちょっと総括してみる。「アイデアやエッセンスを個別に見ると、結構目を引くものがあるのに、全6話のシリーズを貫く背骨が腐っているためグズグズになっている」……これがシリーズ全体の感想。
(↓初見時の感想)
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20100620
(↓関連記事)
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20100629
その背骨の腐り方がちょっと珍しい。日本のTVドラマ(はほとんど見ないので実質的にアニメ限定ですが)の場合、「そもそも背骨が無い」とか「シリーズの最初と最後で背骨の部分が変わっちゃってる」というパターンはよくありますが、このリメイク版「プリズナーNo.6」にはがっしりとした背骨があって、それが最後まで貫かれていて、でも最初から腐っている。

いや実際、ちょっと感心します。AXNミステリー放映時に4〜6話を観て結末を知っていて、そのうえでMXで1話から続けて観ると、ああ、ちゃんとあの結末に向けて構成してあるなぁと。

でもその結末というか真相がクソつまらなくて、そのクソつまらない真相に各エピソードをチューニングしている。

第2話なんかは割と面白いんです。異邦人は訪れない、村民しかいない村なのに、村内をめぐる観光バスがあるという設定はシュールでそら寒く、巧いツカミになっている(でも「FREEDOM」と大書してあるのはストレート過ぎてダサい)。「村」の風景は、オープンセットかCGか観光施設の流用かは知らないけれど、ポートメイリオンとは違った魅力があってちょっと行ってみたくなる。決まったコースの循環しか許されないバス、だが6のバスはそのコースから逸走する、というのも分かりやすくて目を引く波乱だ。逸走の先には外界の存在を示唆する錨があり、しかし海中でなく沙漠の真ん中。さらに、本来なら外界に開かれているはずの駅とレールがあるが、列車は絶えて来ない(「ぷりぞな6」が連想されて苦笑したんですが、確かノベライズ版「プリズナー」にも駅は出てきたはず)……等々。

6が「兄」をそそのかすことまで含めて、「村からの脱出を目指す話」としてのお膳立てはそろっている。「6は記憶を失っている」「村民は外界が存在していることさえ知らない」という前提において、オリジナル「プリズナーNo.6」との差別化もまず十分果たしています。

なのに、なのにどうして見終えると「うん、やっぱりつまんない」と思えてしまうのか(苦笑)。愚考すると、それはやはり「村」の基本設定の問題なのだという結論に達するのです。多分、スタッフは妙に真面目だったんでしょうね。「ちゃんと説明が付く真相を用意しよう」と考えた。考えたら、ああなった。そして、その真相に向かって物語がまとまるように各エピソードを整えているから、各エピソードもつまらなくなってしまった、と。

「村とは実は◯の◯◯の◯◯で、6は◯◯として◯◯◯の◯◯を◯◯ているのだっ!」って真相は要するに◯◯◯。最初からまさに◯◯の世界、だから謎解きとか深読みとかの余地は予め存在せず、「思わせぶりが投げっぱなし」なのと変わりなくなっている。

まぁ、東西がにらみ合う冷戦下という世界情勢が言わずもがなの前提だったオリジナル「プリズナーNo.6」に対して、現代でやるとなると◯◯の世界を向くのは仕方の無いこととは思うけど。それにしたってやりようがあるだろうになあ。そこらへんに考えを巡らせると、「日本にはセカイ系があってよかった」という(私にはいささか不本意な)結論に達してしまう。

(以下は2010年9月14日付よりコピペ)

ぷりぞな6 (4) (サンデーGXコミックス)

ぷりぞな6 (4) (サンデーGXコミックス)

完結。こういうのもセカイ系か。「まぁこれはこれでいいんじゃないの?」と思えるのは、「全く好みでないから評価しようがないわ」という反応でもある。ただし、リメイク版…というか『プリズナーNo.6』というタイトルを冠した2009年製作のテレビドラマがあの出来だったので、相対的にこの漫画の評価が上がったのもまた事実。日本は「セカイ系」が一ジャンルにまで育ったことを(「こういう感じ」の作品を、ひとつのジャンルと認識できるほど洗練させたことを)誇っていいと本気で思う。私にその気は無いが。
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20100924