パニック映画じゃあるまいし

JR磐越西線で落石、列車が脱線=乗客ら13人けがなし−福島
 14日午前9時45分ごろ、福島県西会津町のJR磐越西線豊実−徳沢間で落石があり、走行中の新潟発会津若松行き快速列車「あがの」(3両編成)に衝突、先頭車両が脱線した。JR東日本によると、乗客11人と乗員2人にけがはなく、乗客は徳沢駅に徒歩で避難した。
 現場は徳沢駅の西約200メートルの阿賀野川沿い。石は先頭車両の下に入り込んでおり、同車両はすべての車輪が脱輪した。走行中に落石に遭ったのか、既に落ちていた石に乗り上げたのかは不明。2、3両目の車両に損傷はなかった。

時事通信(2011/07/14-13:29)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011071400364

「走行中に落石に遭ったのか、既に落ちていた石に乗り上げたのかは不明」って、そりゃ「不明」と言っとけば間違いにならないけどさ……。これではまるで、走行中に落石に遭う可能性も少なからずあるかのようだ。

パニック映画じゃあるまいし、タイミングよく走行中の列車を狙い澄まして落石が起こることなんて希有でしょ。ひっきりなしに列車が行き交う路線ならまだしも、豊実−徳沢間といったら定期列車は1日8往復。ちょうど列車が走っているところに石が落ちてくるなんて、あり得ないといっていい。

まぁ事故状況によっては、「走行中に落石に遭ったのか、既に落ちていた石に乗り上げたのかは不明」と言わざるを得ない場合もあるだろう。だけどさ、ちょっと想像すりゃわかるでしょ。運悪く走行中に落石に遭ったとしよう。でも、その石が車体側面にぶつからず、跳ね飛ばされることもなく、巧い具合に車体下面に入り込んで、さらに後ろ側の4輪だけでなくすべての車輪が脱輪する確率なんて何%よ? 限りなくゼロに等しいだろう。

JR側の発表からこうだったのか、時事通信の記者が質疑応答でこんな話を引き出したのかは知らないが、どうあれナンセンスな一節だ。なぜこんなことを書いたのか理解できない。

そんなことより、運転士は石に気付いたのかどうかが重要なのに、そこには一言も触れていないのも問題だ。ブレーキをかけたのは石にぶつかってからなのか、それともそれ以前なのか? 「発見できたか否か?(運転士は十分な注意を払っていたか、そもそも見通しが効く区間なのか、落石の可能性を考慮して徐行すべき区間ではなかったのか)」「適切な対応ができたか否か?(どのタイミングでブレーキをかけたか)」は今後の対策を考える上でも重要なはず。なのに、走行中に落石に…などとありえない可能性を示唆するトンチキな話に文字を使って、こちらはまったく取り上げない。普通に考えれば、何を優先して伝えるべきかわかりそうなもんだがなぁ……。