オカルト学院と半魚人とFacebook

昨年秋、旧知に「最近の面白いアニメ」を訊いたとき、名が上がったのが『世紀末オカルト学院』。1月から再放送が始まったので1話から見てみることにした。……なんだよ本当に面白いじゃないか、ち。(なぜ舌打ち)
オープニングからモスマンの襲撃だの空に輝くウンモ星人の紋章だのスプーン曲げだのESPカードだのと、ちょいとレトロなオカルトアイテムてんこ盛りなんですが、そんなオープニングで異彩を放っているのがこれ。

「えーと、見覚えあるんだが元ネタはなんだっけ? シュールレアリスムの有名な作品で、ダリではないから……大方マグリットだろ」と思ったらその通りだった。
その通りだったのだけど、んー、数々のオカルトアイテムの中にファインアートが混じっているのはどうも気に入らない。
「いや待て、よく思い出せ。マグリット以外に何かあっただろう。もっとオカルト寄り……、というかぶっちゃけいかがわしい奴が。ほら、こういう写真に、あたかもホントにあったかのような記事を付けた……ええと、あれは」
そして思い出す(はい、ここからが本題)。

これでした。

頭はマス、下半身は人間という半魚人が見つかった!
既に産卵ずみ、やがてフロリダ沖に子供たちが姿を見せるかも。
昨年11月21日、"半魚人"がアメリカ、フロリダのデイトナビーチの海岸に打ち上げられているのが発見されました。その名が示すとおり、人間の足を持ち、上半身は魚といった容姿です。
目撃者は警官も含め、50人以上にも登っています。警察から遺骸を持ち込まれた海洋生物学者のリチャード・カール博士が解剖したところ、驚くべきことが分かりました。
まず、足の細胞は人間とほぼ同じであること、体は内臓も含めて魚のマスに似ていたそうです。また、ロウのような物質が皮膚を水との接触から保護するために存在していたのです。脳は、ふつうの魚より大きかったのですが、他の魚より賢かったのかどうかはより綿密な調査が必要だそうです。
そして、完全に成熟した人間女性の生殖器が備わっており、子供を生んだばかりだ、と同博士は指摘しています。
同博士とその調査チームは今後も研究を続けていくそうで、その成り行きが注目されています。
1992.12.15

掲載書はこちら。

スーパージャーナル―特殊報道写真集〈2〉

スーパージャーナル―特殊報道写真集〈2〉

初版は1995年、時はまさに世紀末であった。
奇跡!!最驚の報道写真―スーパージャーナル〈2〉

奇跡!!最驚の報道写真―スーパージャーナル〈2〉

へー、文庫版の2巻が昨年になって今さら発売されてたのね。買っておこう。
さて、この記事の出典(というか写真と記事を作ったとこ)は"Weekly World News"というタブロイドペーパー。デタラメ記事であることを前提にしていた素晴らしくムチャな新聞だ。『2』の表紙に使われている写真はクリントン大統領とエイリアンとの握手だったり。
もっとも、私が知っているのは『スーパージャーナル』掲載分だけ。原語で読んだことはないし、休刊になっていたことさえ知らなかった。
ところが先日、思いがけずその名と再会したのである。

Facebook終了」のニュースにユーザー騒然、混乱に便乗する攻撃も
[鈴木聖子,ITmedia]2011年01月11日 08時11分 更新
Facebookが3月15日で終了する」というニュースが先の週末にかけて出回り、ユーザーの間でうわさに火が付いているという。セキュリティ企業の英Sophosがブログで伝えた。
それによると、問題のニュースは「(Facebookの)経営で自分の人生がダメになった。この狂乱をすべて終わらせる」というマーク・ザッカーバーグCEOのコメント付きで流れたという。
もちろんこれはすべてデマ。しかしユーザーの間では、この記事を引用するメッセージが大量に飛び交った。リンク先の「Weekly World News」と称するWebサイトを見ると、ほかにもでっちあげのニュースやコメントが多数掲載されているという。
(以下略)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1101/11/news019.html

……。
……いやその。
出所がWWNという時点で疑う余地はないだろうに……。
疑うまでもなく確実にインチキなんだから。
ソースが何処かを抜きにして、ただ「Facebook終了」というニュースだけが一人歩きで広まってしまったのだろうが、それにしたっていかにも思慮が足りない話だ。
で、コロっと騙された人も相当にアレなんだけど、それよりむしろ「悪質なデマ」とか憤ってる人の存在のほうが気がかり。こっちも結局、嘘を嘘と見抜けてない人たちで、なのに言ってることは正論めいているから始末が悪い。「……と称するWebサイトを見ると、ほかにもでっちあげのニュースやコメントが多数掲載されているという。」とかいう書き方も息苦しく、冗談もうっかり言えない窮屈な社会になったもんだとと思う。
それともう一点、WWNにしてみれば「Facebook終了なんてあり得ない」(それこそ半魚人並にあり得ない)からこそネタにしたんだろうに、少なからぬ人がそれを「あり得る」と捉えたことが、ネットコミュニティの脆さの表出のようで興味深い。それも、よりによって本名必須というリアルでの交流と関わり深いFacebookで騒動が起きた、という点が。

号外!!虚構新聞

号外!!虚構新聞

おまけ。今日コンビニで見つけた『虚構新聞』の単行本。息の長いサイトだとは思っていたが、まさか本にまとまるとは。「継続は力なり」とはよく言ったものだ。幸いにも「嘘も百回言えば真実になる」にはならなかったようだけど(ま、百回が百回とも違う嘘だしね)。