UFOとぶんぶく茶釜

ビリーバーでも否定論者でもない真っ当なUFO研究家は日本には数少ないが、その数少ないひとり皆神龍太郎がそのものズバリな本を世に出していた。

UFO学入門―伝説と真相

UFO学入門―伝説と真相

予断を交えず、網羅的に収集した大量の関連情報によって、UFO目撃情報の真相に迫っていく。研究対象はUFOではなくUFO目撃情報のほうともいえるが、とはいえ当のUFO(エイリアン・クラフト)の現物がない以上はこの研究手法が「UFO学」の名を背負うことになる。
この本のなかで皆神龍太郎、シャレたことを言う。

「UFOの95%は見間違い」と説明すると、どうしてもUFOは宇宙人の乗り物だと固く信じている人は、よくこう聞いてくる。
「じゃあ、その最後の5%の正体は一体何なんですか。どう調べても正体がわからないのならば、それこそ本当のUFO、宇宙人の乗り物ということじゃないですか。正体がわからない以上、宇宙人の乗り物でないと否定することだってできないわけでしょう」
 筆者はこう問われた場合、次のように答えることにしている。
「いいえ、残りの5%はタヌキが化けた茶釜が空を飛んでいるんですよ。正体がわからない以上、タヌキが化けているのではないと否定することだってできないはずでしょう」

でもね、コレがわかんない人が世の中にはいっぱいいるのよ。
「何言ってやがる、UFOがぶんぶく茶釜のわけねーだろ。理由? UFOは実在する可能性があるけど、ぶんぶく茶釜はお話だからだよ」
あなた、こんなふうに反論しちゃったりしません? 消極的ビリーバーというべきですかね、UFOを見たことやその力を感じたことはないけれど、上記のロジックを説かれてもUFOとぶんぶく茶釜とが同じであるとはどうしてもわからない。そんな人がたくさんいる。
『UFO学入門』は非常に充実した内容を、平易な文章で読みやすくまとめた本、ではある。
だけど、前提として「それで結局、この本は『UFOは実在する』って立場なの? それとも『UFO話は全部デタラメだ』って立場なの?」という段階を超えちゃった人向けなんですよ。
なので、そういう意味では非常に敷居が高いと思えます。結論はともかくも保留し、情報を幅広く、数多く集めて検討する。既に見間違いや詐欺だと判明している証言は宇宙人実在の根拠にしない、といった当たり前の手順なんですけどね……。最近どうもね、この世の中それを当たり前として共有してないんじゃないか? と不安になる。
これを読んだのはもう1年以上も前なんですが、昨日付のエントリで取り上げた『聖戦士ダンバイン』の「異星人は信じてもバイストンウェルは信じない地上人」の描写に「UFOとぶんぶく茶釜」を思い出した次第。
ついでにいうと、「UFOとぶんぶく茶釜」の元ネタ? がこれ。

反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書

反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書

「UFOとぶんぶく茶釜」の並びでいうと、この本は「創造主と空飛ぶスパゲッティ・モンスター」。「創造論を科学として教育するのであれば、同じ屁理屈において同等に科学的である我らが空飛ぶスパゲッティモンスターも教えられるべきである」というお話。背景にあるアメリカ社会の問題がディープ過ぎで、私の理解を超える部分がある。