大山鳴動ポンコツの語源

前々回前回のつづき、ポンコツ語源シリーズ第3回。ただ、前回のコメント欄で思いがけず話が進んだので、ここでは現在の「ポンコツ」についてまとめてみます。

げんこつが先か金槌が先か、また語源は何かはおいといて、なにはどうあれ現在ではポンコツが「金槌」「げんこつ」「殴打」の意味で使われることはありません。大概は「中古品」や「廃品」、中古のなかでも「こわれかかった機械・器具」を意味します。

では、その現在における意味のルーツはというと、どうも昭和20年代に自動車修理をポンコツ屋と、あるいは中古車をポンコツ車と呼んだことらしい。まぁ、ほぼ間違いない。

でも、何故に自動車なんですかね?

鍋釜を修理する鋳掛屋だって、それこそ靴屋だってハンマーでポンポンコツコツとやっているじゃないの。ハンマーそのもの、あるいはハンマーでの修理が由来であるなら、他の商売がポンコツ屋と呼ばれていた例や、ポンコツ車に先んじて例えば「ポンコツ鍋」があってもおかしくない。なのにポンコツといえばイコール自動車修理あるいは中古自動車だった。何故に車だったんでしょう?

昭和34年(1959年)阿川弘之の小説「ぽんこつ」しかなかったなら、「この作品によってポンコツ=自動車解隊業のイメージが定着し、他の意味は忘れられてしまった」と推察できますが、どっこいそれより以前、昭和26年(1951年)の『現代用語の基礎知識』と昭和28年(1953年)の『岩波写真文庫 自動車の話』に、説明付きで「ポンコツ」が登場している。この時点で既に関係者の間では既に普通に使われていた、けれど一般に向けてはまだ解説がいる言葉だった、ということでしょう。

戦後の復興期において自動車の急速な需要増があり、それに対応するには中古車・戦災車さえ第一線で使用する必要があった。そこで新商売として「ポンコツ屋」が急激に増えた、といった背景なのでしょうか? やがて、朝鮮特需にも支えられて新車が増加したことで、中古車はイコール「ダメなもの」となり、「ポンコツ」は侮蔑の意味あいを持つようになった……、とかなんとか。

というわけで、一連のエントリの出発点であるところの、古い車の擬音「ポン・コツ」説は検証できず、最後まで謎として残ったままにこの話題は終わるのであった (苦笑)。