百家争鳴ポンコツの語源

昨日のエントリの続き。
さらに調べてみると、屠殺もカバーしている解説がありました。

いまさら聞けないYO日本語雑学辞典♪
http://www.melma.com/backnumber_164809_3498213/

ズバリ、ゲンコツで殴ること、あるいは殴って殺すことを表現していた。
仮名垣魯文の『安愚楽鍋』には牛や馬の屠殺という意味で使っている。

これは、日本にやってきた西洋人が、
ゲンコツをポンコツと聞き違えたところから転じたという説と、
英語が入ってきた明治時代に、罪という意味のパニッシュ(punish)と
ゲンコツを組み合わせて「ポンコツ」にしたという説とがあり、
どちらが語源かはっきりしない。

パニッシュには俗にボクシングのとき相手を強打する、
試合で相手をやっつけるという意味もあるので、都合のいい言葉だった。

この「ポンコツ」という言葉が生まれて以来、ゲンコツで殴ることから連想して
ハンマーのことを「ポンコツ」というようになり、
ハンマーで打って車を壊す作業も「ポンコツ」というようになった。
やがて、壊すその車自体をも「ポンコツ」と呼ぶようになったらしい。

下町の自動車解体業の家族を描いた阿川弘之の小説『ぽんこつ』から一般化した。

昨日のエントリの3つを全てひっくるめたような内容ですな。広辞苑は屠殺を第一義にしていますが、他に用例が無いなら「仮名垣魯文の『安愚楽鍋』には」屠殺という意味で使われているのであって、本来は広く「殴ること、あるいは殴って殺すこと」を意味していたと捉えるのが妥当でしょう。そもそも『安愚楽鍋』の問題の部分だって、ポンコツがストレートに屠殺の意味だったらユーモアもへったくれもないし。
ところがこの上さらに、げんこつ聞き違いでもパニッシュげんこつでもない語源説も出てきます。

楽しく読めて、為になる日常言葉辞典
朝日新聞社提供
http://www.geocities.com/ResearchTriangle/Lab/2921/entertainment/words.htm
<ぽんこつ>
げんこつで殴ること。中古品。廃品。明治時代に、”げんこつ”を西洋人が”ぼんこつ”と聞き違えてうまれた、と言われているが、”げんこつ”と”パニッシュ”(罰)とが混交して「ぽんこつ」となったのであろう。一方、古くから”大きな金槌”を「ぽんこつ」と言う為、”解体・修理する”という意味にもなった。”中古品”や”廃品”という意味は、昭和34年の新聞小説ぽんこつ』(阿川弘之)によって広まった、とみられる。

古くから”大きな金槌”を「ぽんこつ」と言う…って、だから「古くから」っていつからだと。それはさておいても、これまで紹介したなかではポンコツ=金槌は「のちに大きな金槌の事をポンコツというようになりました」だったり、屠殺の意味に先んじて「もと、かなづちの意ともげんこつの意ともいう」だったりしましたが、この解説ではパニッシュげんこつとはまた別にポンコツ=金槌があったということになります。
では、その金槌ポンコツはどうなのかと調べてみると、これがあるもんだ。「現代用語に見る商売のあれこれ半世紀」に、1951年の『現代用語の基礎知識』から引用した記事があります。

「現代用語に見る商売のあれこれ半世紀」
http://www.jiyu.co.jp/GN/cdv/backnumber/200503/topics01/topic01_03.html
ポンコツ
1951年本誌掲載。以下、
クツ屋などがポンポンコツコツと釘を打ったりする金槌をポンコツというが、そのポンコツでトントンやり、老朽車や、故障車や、戦災車や、中古品などの自動車を修理して、一見新品車やそれに近いものに見えるような車に仕上げる商売をポンコツ屋という。

「クツ屋の金槌」であり、かつ擬音でもあったと。でも靴屋も文明開化以降の商売だから、仮に「古くから」だとしてもパニッシュげんこつと同時代ってことにならないか?
ただし語源が擬音かどうかはさておいても、「金槌をポンコツという」と断言し、それをただの前置きとしていることから、この頃には金槌をポンコツと言っていたとみてよいでしょう。
(つづく)