/ヴィクトリーに立ち向かえと、君は!

などとタイトルもトミノ調に、何の脈絡も無く「機動戦士Vガンダム」の話。この作品の最初の主題歌といえば「STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」、歌詞もまた♪STAND UP TO THE VICTORYがさびになっているのは周知の事実だろう。

だがこれを「勝利を目指して立ち上がれ」の意味と誤解している人もいるのではないか。それなら「stand up for the victory」である。「stand up to」では「(to以下に)立ち向かう」との意味だ。

立ち向かうべき相手となると、victoryの意味が「勝利」だとは考えにくい。ここでのtheは定冠詞による抽象名詞の普通名詞化ではなく、ストレートに「そのヴィクトリー」と捉えるべきだろう。それはつまり劇中に言うヴィクトリータイプ=Vガンダムを指す。

だからこの歌は一見すると、戦士たちを鼓舞し、Vガンダムを称揚しているかのようだが、その実「昨日までのmy dreamを信じて、今日からの『Vガンダム』に立ち向かうぞ!」という、井荻麟いやさ富野由悠季のドス黒くも悲壮な意志表明なのである。

向こう側には何も無いかもしれないと恐れつつ、しかし「構わない」とその恐れを振り払って『Vガンダム』に立ち向かった富野由悠季――。「いつかきっとつかんでみせる」と言っていたものは、果たして手にできたのだろうか?



中学英語のレベルだから(ていうか『SBR』ではスタンドの由来がstand up toだそうで、それで知った人も多そう)こうした考察は既にされていると思いますが、意外と見かけなかったので(というのは私が『Vガンダム』関連書籍、記事にほとんど目を通していないからだけど)書いてみました。まぁ単に「stand up for」と「stand up to」を取り違えただけとの可能性も大なんですけどね。監督がどこかで言及してたりしないのかしらん?