パクリに関する民族ジョーク

「あの会社の車、ウチの車のデザインをそっくりパクッているぞ!」というとき。
イタリア人は放置する。
ドイツ人は猛然と抗議し、デザインを変更させる。
アメリカ人は契約を結び、その範囲で使用権を認める。
……というのはただの例え話ではなく、『トランスフォーマー カーロボット』で実際にあった話に基づくものです。
TFカーロボットの玩具は、その名のとおり自動車からロボットに変形するものがメイン。とにかくよくできていて、パーツ分割の線などを気にしなければ自動車形態はミニチュアカーとしても通用するレベルでした(ディテールへのこだわりも強く、ディアブロなどは見る人が見れば欧州仕様ではなく対米輸出仕様と判別できるほどだとか)。
元々は日本国内限定のシリーズだったのですが、諸般の事情でアメリカでもアニメ放映&商品展開されることになりました。その際の、玩具製品の扱いがまちまちだったのです。
イタリア車・ランボルギーニディアブロをモチーフにした製品はそのままのデザインで発売された一方、ドイツ車・メルセデスベンツMクラスをモチーフにした製品はヘッドライト他のデザインを大きく変更して別の車ということに。そしてアメリカ車ダッジバイパーがモチーフの製品は正規のメーカーライセンス商品として発売されました。
イタリアは鷹揚でアメリカは契約の国、そしてドイツはマイスターの国(ひそかにダブルミーニング)ですなぁ、てなエピソードを先日のこのニュースから連想したわけです。

中国製自動車そっくりだ BMWが提訴
2007年09月11日【asahi.com
 フランクフルトの国際自動車ショーに出展された中国製自動車が自社の車の意匠権を侵害する疑いがあるとして、独BMWはその輸入販売会社を相手取り、国内販売の中止を求めて7日にミュンヘンの地裁に提訴したことがわかった。
 問題の車は双環汽車(河北省)製「CEO」で、BMWは自社の高級SUV(スポーツ用多目的車)「X5」のデザインに非常に似ているとしている。BMWは、独国内で10月中旬から販売を予定している双環製の車のショー出展を見合わせるよう求めていた。
 訴えられた輸入販売会社は「CEOは約3年前から市場に出ており、いま訴えるのはおかしい」(幹部)としている。CEOはすでにスペインやロシアなどで販売されているという。
http://www.asahi.com/car/news/TKY200709110490.html

問題にしたいのは、この訴訟の行方よりも日本での過去の事例。CEOがX5の意匠権を侵害してるというなら、ホンダはやはり、パクリームの件でトヨタを訴えるべきだったと思いますね。
パクリームというのは、大ヒットしたホンダ・ストリームの後を追ってトヨタが発売した、そのパクリ車・ウィッシュの通称。コンセプトやムードはおろか外寸までまったく同一という、パクリを隠す気も無いパクリ車でした。ウィッシュはデビューするや大ヒット、一方でストリームは完全に客を奪われ、見る影無く販売数を落とした、てな事件があったのです。
ホンダにしても一応は訴訟も考え、しかし勝算が無い(まぁ意匠権の侵害とは言い難いしね)とみて諦めたのでしょうが、いま思い返してもヒドイ話ですな。値段以外の全てが劣る後追いの立場ならば、良い悪い抜きでパクリも選択肢のひとつだと思うけど、世界に名だたる大トヨタですぜ?
「それがトップシェアのすることですか!」
「トップシェアだからやれんだろ!」
ストリームは後に、マイナーチェンジ時の広告で「ポリシーは、あるか。」という、誰に向けて言っているのかと聞きたくなる挑発的なコピーを採用します。これには同情はできるけど負け惜しみか愚痴のようで、ちょっと見苦しく感じたりもしました。



「あの会社の車、ウチの車のデザインをそっくりパクッているぞ!」というとき。
イタリア人は放置する。
ドイツ人は猛然と抗議し、デザインを変更させる。
アメリカ人は契約を結び、その範囲で使用権を認める。
日本人は涙を飲み、しかし大声で愚痴をこぼす。