また栃木県警の冤罪事件、とはいわないが

栃木県今市市(現・日光市)で9年前に起きた殺人事件の犯人逮捕の件。連日の報道でだんだんと「当初から怪しんでいた、捜査線上に浮かんでいた」「しかし決定的な証拠に欠けた」」みたいなストーリーが形作られてるけど、ふざけるな! だよな。「事件後ひと月の段階で義父が『息子が怪しい』と通報したのに警察は無視した」っていう捜査の不手際を糾弾すべき展開だろうに、なんでそうなるんだ。

つか、そもそも今回の逮捕ってのは4月16日、偽ブランド物事件で逮捕した男が9年前の殺人事件についても「犯行をほのめかす供述をした」が始まりだろ。身柄を確保したのはたまたまだ。しかもその後ひと月以上も音沙汰無しで、6月3日にようやく逮捕になった。「ああ、証拠固めにひと月半か。何か決定的な物的証拠が出てきたんだろうな」と思いきや、なんとまあ物証は無いという。ひと月半なにをやってたの? そしてどうして逮捕できるの? あたかも事件への関与を示す「証拠」であるかのように、パソコンから色々とアレな画像が出てきたと報道されているから、その中に事件に直接関係する写真があるのかと思ったら、どうやらそれも無いらしい。

……ひょっとしてさぁこれ。偽ブランド物事件の証拠品として押収したパソコンにアレな画像があったから「こいつが9年前の事件の犯人に違いない」と決め打ちしたのが4月半ば。それをまず地元紙に「犯行をほのめかす供述をした」とリークした。そこから物証を探し始めたけれど困ったことに何も見つからない。ただその間も揺さぶり続けていた容疑者がとうとう根負けして本当に「自供」したので逮捕……って流れじゃないの?

冤罪か否かはさておき、逮捕に至る経緯を既に報道されている範囲だけで追いかけても、栃木県警のやっていることは相当に怪しい。ふつうに考えて怪しい。まぁいい、それも警察の仕事だと認めたとしても、解せないというか許し難いのは、その怪しさから目を逸らして(怪しさに気付かずに?)、警察が発表するまま、警察の意に沿うような報道をするマスコミのほうだ。彼らには思考能力というものが無いのだろうか?