「セルフサービス」黎明期 #1

先日のエントリについて、新日本スーパーマーケット協会の方に「セルフサービスの店」「スーパーマーケット」の定義と歴史を詳しく教えていただきました。ただ、「どこかの段階で、セルフサービス方式の食料品店ならば、本来の定義に当てはまらなくとも一緒くたにスーパーと呼ばれるようになった」はずで、そのあたりを探りにちょっと大宅文庫まで行ってきた。

●関連記事一覧●
10月16日付 「あの日見た店の名前を僕達が知っていようといるまいと」
11月3日付 「セルフサービス」黎明期 #1
11月4日付 「セルフサービス」黎明期 #2
<随時追加>
 

大宅文庫の索引では「スーパーマーケット」に関する最古の雑誌記事は『婦人朝日』昭和30年10月号掲載。「GoStop」という、1ページに5本の短い記事を載せたコーナーの中でした。

セルフ・サービス
アメリカのスーパー・マーケット式にセルフ・サービスの店が増えてきた。
(略)
いまのところ食料品、それもカンヅメが主でまだもの珍しいという段階。第一アチラさんのように一週間分の食料を買ってきて電気冷蔵庫に入れておくといった余裕もなければ設備もない。ことに「福神漬二十円ちょうだい」式のはかり売りがわれわれの食生活の主流をなしている限りは、セルフ・サービスも充分の進化を発揮できない。
(略)
(セルフ・サービスは人手がいらなくなり廉売できるが) 最近のように御用ききが殺到、ちょっとまとまった買物は届けてくれるお国柄では、人手減らしなどは必要ないかもしれないが。

こんな調子で、セルフ・サービスの今後の普及には疑問を呈しているのが面白い。売り物は「カンヅメ」だとか「電気冷蔵庫」が普及していないとかいうのはさておき、「はかり売り」が主流、「御用きき」が殺到というのは隔世の感があります……というか異世界の出来事を見る思いです。言われてみれば『サザエさん』とか『いじわるばあさん』でここらへんの描写をみた記憶がないわけではないのですが。
当ブログ的な本題に関しても、書き出しがいきなり「スーパー・マーケット式にセルフ・サービスの店が」で、このふたつの言葉が一般に認知されたのはほぼ同時だったと推察されます。
ところで同じページの記事にこんなのが。

キー・パンチャー
十月一日には国勢調査がある。(略)集計には数年かかるが、そのピークをなす来年中には、七百人の女子が動員され、その大部分がキー・パンチャーとしてカードに穴をあける。(略)
キー・パンチャーは電子計算機の発達とともにあたらしい女性の職業として知られてきた。(略)巨大な計算機を操作する重要な仕事だけに、大いに将来性のある婦人職業だろう。

……。かたやセルフ・サービスは「必要ないかもしれない」、こなたキー・パンチャーは「大いに将来性のある婦人職業」。58年も昔のことですから認識に違いがあるのは当然ですが、それにしても先のことはわからないものだと思い知らされます。