- 作者: 池田浩明,ワッキー貝山
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/04/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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さて、メインのタイトルは「インチキガチャガチャ大全」ですが、取り上げるのはコスモスの製品のみ。そう、20円ガチャガチャの、「シェア80% 世界一」の、あのコスモスです。
ロッチのシールなど、著作権無視、パクリにコピー、雑なつくりのガチャガチャ製品を粗製濫造してきたメーカー、コスモス。70〜80年代の子どもの心に突き刺さった、約1000点に及ぶインチキガチャガチャをここに開陳!!
創業から倒産まで、わずか11年! 駄菓子屋の店先を賑わせた「赤いガチャガチャメーカー」の実態は……。ほんと、無茶苦茶!
「うどん粉をこねてスライムをつくっていた」「ビックリマンシールをそのまま模写していた」「近所の猫を捕まえて、ニセモノのなめ猫グッズをつくっていた」など、杜撰にして面白過ぎる当時のコスモスの実態に迫る、元社員たちへのロングインタビューも!
だいたいこんな本。
今の感覚で「インチキガチャガチャ」と言ったら、版権無視のコピー商品、モドキ商品くらいしか思いつかないでしょう。実際、ロッチのビックリマンシールでロッテに訴えられたコスモスなのだから、まずそういうのを想像するのは当然といえる。
コスモスを舐めちゃいけない。
都築響一が解説に曰く「とにかくカプセルに入れば商品と言い張れる」。 いやもうホントに、ピンからキリまでというか、キリばかりというか、「コスモスのガチャガチャってこんなに色々出ていたのか」と驚くばかり。怪獣消しゴムモドキ、キン消しモドキは当然アリ。シーモンキーならぬシーモンチーとかダイカスト製の銃のミニチュアとか「999」っぽい「地球←→アンドロメダ」のパスとか、そこらへんも子ども向け商品としてはまず常識的でしょう。
だけどなぁ、「牛乳瓶のふた」とか、釣具のミニチュアとか、やきとり缶のキーホルダーとか一体どこの子供が喜ぶというのか。
輪をかけて恐ろしいのは、そんなインチキだらけのなかに正規のライセンス商品が紛れていること。「魔境伝説アクロバンチ」とか「ミラクルジャイアンツ 童夢くん」などは番組スポンサーにもなっていたそうです。ヒドイのはガンダムで、「ダンガム」というパチもんを紹介するページをめくると、正規の「機動戦士ガンダム」のロゴとイラストを使った商品が載っている。
会社の規模が大きくなるにつれ、著作権を意識するようになり、正規の手続きを取るようになった……のならいいのだが、ロッチ事件はこの後で、いやまったく、コスモスという会社はカタギになろうとは思わなかったのか。
そのロッチのビックリマンシール、基本はロッテのシールの複写なのだが、なかにはコスモスオリジナルの「サタンザデビル」「ゴッドガイ」なるキャラのシールもあったそうで、そうなるとパチもんなのか歴としたオリジナルなのかわからなくなってくる。っていうか、いっそ全部オリジナルキャラにしとけよ(笑)。
いやホント、元社員のインタビュー2本を読むと、「カタギになろうとは思わなかったのか」という疑問が一際強くなる。社長がなんというか、個性的という域を超えて狂人というほか無い人物だったようで、その個性がそのまま会社の姿勢だったようだ。
そうそう、インタビューを読んで何より驚いたのが、コスモス倒産のトリガーを引いた会社の名前。
「(ボックス型ガチャガチャ機を)レッサーって会社から買おうってなったんだけど、そのときイトマンがひっかかったんだよ。商社って、どんな商売でもやってるだろ。レッサーとイトマンはつるんでた」
コスモスは海賊のような集団だったが、イトマンという総合商社は、その上手をいっていたのではないか。コスモスに融資してボックス機を大量に導入させ、経営を傾かせる裏で、笑ったのはイトマンとボックス機メーカーだったはずだ。
ってオイ。何の注釈も無くサラッと流されているが、これ、あのイトマンだよねぇ? 「戦後最大の不正経理事件」直前にもこんな暗躍があったんですねえ。