「バーナード嬢曰く。」

昼休みに職場近くの文教堂へ行く。おー、施川ユウキの新刊か。三冊同時発売とは妙に力が入ってるな。なんとかラバトリー(asin:4861768187asin:4861768756)読んで無いんだよなー、とか思いつつ手に取る。
表紙では「カラマーゾフの兄弟」を持った女の子がいきなり、
「一度も読んでないけど
 私の中ではすでに
 読破したっぽい
 フンイキになっている!!」

と叫んでいる。

ああ、あるよねこういうの。施川ユウキは相変わらずこういうノリかぁ、などと冷ややかに思いながらひっくり返す。
裏表紙。別の女の子。
「ディックが死んで30年だぞ!
 今更 初訳される話が
 おもしろいワケないだろ!」

……買わざるを得なかった。
コレね→ 「トータル・リコール ディック短篇傑作選」。本編ではちゃんと「まぁでも傑作選だから基本どれもいいよ」とフォローしてます念のため。
さてバーナード嬢、裏表紙に曰く。

本を読まずに読んだフリをしたいグータラ読書家"バーナード嬢"と
読書好きな友人たちが図書館で過ごすブンガクな日々――。
古今東西あらゆる本への愛と"読書家あるある"に満ちた"名著礼賛"ギャグ!!

そんな感じなので、まずは『今日の早川さん』(asin:4152088559)が好きな人と、「あれは今イチ」という人に勧めたいマンガです。
主人公のバーナード嬢(自称)も、シャーロキアンの図書委員も良いけど、とにかく面倒なSFファン(つまり典型的なSFファン)の神林ちゃん(裏表紙で叫んでる娘)が良い。ハードSF作家、グレッグ・イーガン作品に関する深い考察には目から鱗が落ちました。
「みんな実は、結構よくわからないまま読んでいる…」 → 「多少よくわからなくても すっっっごくおもしろい!!」 というだけならいいとして、「私がよくわからない時、同じ部分作者もわからない」という、作者に対して実に失礼な仮説を展開。しかしそれを、読者にはよくわからないが濃密な論理で説明するから引き込まれてしまう。
そして締めのモノローグがこれですよ。

ハードSFを読む上で求められるリテラシーとは
「難しい概念を理解できる知識を持っているか」ではない。
「よくわからないまま、でも 物語の本質を損なわずに
作品全体を理解するコトが可能な教養のラインを
感覚で見極められるかどうか」……だ。

いやー素晴らしい。私はまだイーガン作品は一作も読んでいないのですが、この台詞の意味は分かるからもう読んだことにしてもいいよね?(←主人公の性格が伝染している)