ふつうで凄い小山高生

キッズステーションで帯放映していた『魔神英雄伝ワタル』が終わった(今日からは『ワタル2』)。ひととおり見終えて思うのは、「小山高生の評価って、アニメ界に残した功績からすると、不当と言っても差し支えないほど低いなあ」ということ。

ROBOT魂 [SIDE MASHIN] 龍王丸

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スーパーロボット超合金 マイトガイン

スーパーロボット超合金 マイトガイン

今年になって「懐かしのロボットアニメ」枠で竜王丸とマイトガインの完全新作玩具が発売されるのですが、小山高生はその両方にメインライターとして関わっているんだよな。タイムボカンシリーズを支えたことなどは言うに及ばないし、『聖闘士星矢』『ドラゴンボールZ』を筆頭に、ジャンプ漫画のアニメ版にも多数関わっている。
http://www.brother-noppo.com/profile/writer/index.php?wid=194
この凄まじいばかりの作品歴を見よ! 「ほか80作品800話以上」という仕事量だって圧倒的だ。アニオタならばまさかこの名を知らない人はいないだろうし(ていうか小山高生の名を知らない奴にオタクを名乗らせはしねぇ)、非オタでも「ヤッターマンとかのタイムボカンシリーズ」とか「アニメのドラゴンボール」とか、作品名を言えば「ああ、あれの脚本家なんだ」と伝わるはずだ。
自身の作品に加えて、後進を育成した功績もまた非常に大きい。マンガ界における小池一夫に匹敵するのではないか。最近も、『アキバレンジャー』の公式サイトに荒川稔久が香村純子の兄弟子云々と書かれていて「あれ? この二人で師弟じゃないの?」と思って調べてみたら、ふたりとも小山高生門下(ぶらざぁのっぽ)だった、なんてことがありました。
なのに何故か、評伝だとか全作品評とかが見当たらない。いやまぁ、「いわゆる作家性」を強く押し出す作風ではなく、変に「教育的」だったり「問題提議」だったりもしない、「ふつう」の子供向けアニメがメインだから論じにくいのはわかるんだが……。ふつうで凄いものって、何につけても評価しづらいというのは確かなんですが……。それにしたってこう、不当と言っても差し支えないほど低く評価されている。
『ワタル』といえば広井王子の作品扱い、『マイトガイン』といえば高松信司の作品扱い、『ドラゴンボール』は鳥山明の作品だ。どれももちろん間違いではないのだが、どうしてか小山高生はスルーされがちだ。
魔神英雄伝ワタル 創世伝記

魔神英雄伝ワタル 創世伝記

先月発売されたこの本も、文芸関連のスタッフといえば広井王子(企画協力)と朝比奈祥和(設定協力)の対談、メカデザインの中沢数宣を交えての井上幸一(企画)、塚田延式(企画)の座談会があるだけ。これはこれで(モノクロパートは)面白い本なんだけど、それにしても「脚本の比重ってそんなに軽かったの?」と首をひねらざるを得ない。
こう言っては何ですが、小山氏ご本人が元気なうちにどこかの出版社で評伝を出してはくれませんかね。