『怪奇大作戦』「かまいたち」

かまいたち現象を人工的に発生させる機械を用いた、通り魔バラバラ殺人事件の回で、『怪奇大作戦』でワーストワンのイヤーな真犯人が登場する。

それは「真面目で、おとなしくて、イタチのようにオドオドした目の男」、イタチはダブルミーニングだ。とても人殺しには見えない男で(ただし牧さんだけは直感的に見抜いてしまう。「京都買います」にも通じる「変人は変人を知る」パターン?)、ある意味その見かけどおりに、動機が無いまま通り魔殺人を繰り返したのだった。犯人は逮捕されるが動機はわからない、明かされない。何の供述も無いまま、物語は幕を下ろす。

また、『怪奇大作戦』には、犯人の人物像と犯行内容・使用した凶器がちぐはぐなエピソードが多いのだが、この回はそれを逆手に取っている。ごくふつうの真面目な工員が、ただ何かの通信教育を受けているというだけで、「かまいたち発生機」を作り出してしまう。

動機も無ければ、特別な知識や技術も無い。どこにでもいるふつうの青年も、ふいと連続通り魔になるのだ……。

もっとも、現実にこんな犯罪者がいたら「実はこんな過去があった、こんな劣等感を抱いていた。犯人はこれほどに異常な人間だったのだ」というレッテル貼りが成されるだろうから、そういう意味ではリアリティに欠ける話。現実のほうがよほど虚構じみている。

ちなみに、中城けんたろうのマンガ版では真犯人の設定が変更されており、普通のマッドサイエンティスト(なんだこの形容矛盾)とされている。TV版の人物造形は子供向けとしてはわかりづらいという判断だろうか。