トークイベント「コミックロリポップとその時代」#3

前回に引き続き、2月20日ネイキッドロフトで催されたトークイベント「-浦嶋嶺至プロデュース-『なつかしの美少女エロ漫画を語る会』第2夜〜コミックロリポップとその時代を語る〜」、レポート。なんかもう、レポートで無くなってるけど気にしない。 
【ブリッコは三大少年誌の夢を見る】
私にはこのトークイベントがきっかけで知ったことだが、『漫画ブリッコ』は毎号のように表紙の煽り文句で「三大少年誌の一角」を自称していた。
「これからは「サンデー」「ジャンプ」「ブリッコ」を3大少年誌と呼ぶよーにしてください」(84.7)
「いやー、名乗るほどの者じゃあ。三大少年誌の一角ですよ」(84.9)
「あくまでも「三大少年誌の一角」と呼んでほしいの」(84.11)
(参考:「漫画ブリッコの世界」http://www.burikko.net/index.html
他の2誌が「サンデー」「ジャンプ」だというのも面白いが、それはさておく。「三大少年誌の一角」は無論ネタではあるが、メジャー志向を内に秘めているからこそ出てきたネタだといえるだろう。
『コミックロリポップ』もまた、メジャーの志を内に持っていた。
その一例として川瀬氏が明かしたのが、「表4の広告は無料だった」という話だ。「エロ本だから裏返してレジに出す、そのときに恥ずかしくないような広告を裏表紙に」という配慮から、キングレコード(スターチャイルドレーベル)などのメジャーどころの広告を入れていたという。
「裏返してレジに出すから」という話も本当なのだろうが、川瀬氏はもう一点「メジャーな感じを出すために大手の広告を入れていた」と語った。実際、裏表紙だけでなく、表2(表紙の裏)表3(裏表紙の裏)にもタダで大手の広告を入れていたのだから、話は購入者の配慮だけに留まるものではない。
さて、メジャー志向の具体化としてもうひとつ、川瀬氏は「読み物の充実」を上げた。沖由佳雄氏が担当した同人誌紹介コーナー「わくわく同人誌ランド」などには、この連載一本で生活できる程度の原稿料を出していたという。それだけ聞いても正直ピンとこないが、マァエロ漫画誌の文字原稿の相場を大きく上回っていたのだろう。
うーむ…。広告収入が無い一方、読み物の原稿料は高く設定。漫画の原稿料は他誌並みだっただろう。判形は小さいがそれなりのページ数、小売り単価500円。しょせん、といってはなんだが美少女マンガ誌だからそうそう部数が出るわけでもない。これでなんで採算がとれていたんだ?
閑話休題、読み物の中で私がよく覚えているのが「メカニック泥沼セミナー」という、SFに登場するメカや現実の最先端技術について、考証と解説を繰り広げていくイラスト付エッセイ(またSFだ)。川瀬氏の後輩だったか、「ああいうのが書ける天才的な人がいたので書かせた」と言うけれど、いや待て、なんで美少女マンガ誌でメカニックのエッセイなんだ、と。
そしてもうひとつ、大事なことというか根本的なことなのだが、「川瀬氏にとってのメジャー志向とは、何を目指すことだったのだろう?」という疑問がある。
タダの広告はしょせんただの広告(誰がうまいことを言えと)。同人誌紹介にしても、よりマイナーなものを発掘する読み物がメジャー感を出せるとは思えない。メカだSFだという読み物には確かに「ひと味違うムード」があるが、それは「場違いな感じ」というほうが言葉としてふさわしいだろう。
鳥は鳥に。人は人に。風は風に。星は星に。
猫は成長しても人にはなれず、美少女マンガ誌がいつの日か「何かメジャーな雑誌」になれるかといえば「否」だろう。
いや、それともあの時代には、いつか何かメジャーな何者かになることが、手に届く夢だったのだろうか。
とりあえずこんなところで一区切り。