ウェルかめ

主人公が編集者志望ってことなのでしばらく観ていたがギブアップ。これの脚本書いてる人って、会社勤めの経験が無いんじゃなかろうか。

倉科カナ演じる主人公は、徳島のタウン誌の編集部で働くことになるのだが、どうにも失敗続きで……というのが大まかな物語の筋。んで、この倉科カナが編集部内で結構冷遇されるのよ。

おいおい、業界が何だろうが職種が何だろうが、未経験の新人なんて役立たずで当然でしょ。でもって、役立たずでもそれなりにできる仕事を与えるか、でなけりゃ上司なり先輩なりがきっちり指導して育てあげるかだ。新人にいきなり企画書や取材原稿を書かせるのがまずウソくさいし、しかもそのうえ、書き上げてきた取材原稿を何のフォローも無く投げてしまったり、ただ「絵日記」と酷評するだけで何をどうすべきか言わないのだ、このドラマの上司&先輩は。快不快の問題でなく、まるでリアリティが無い。

だいたい、取材が終わって、草稿レベルであれ原稿も上がってから企画変更(事実上のボツ)なんてのも絶対にあり得ない話。というのは、倉科カナひとりの話ではないからだ。あれでは被取材者の立場が無い。

被取材者にはまず取材趣旨と企画書を送って、首尾よくOKをもらえたら忙しい中で時間を割いてもらって、仕事の邪魔をして、話下手な人でも無理して話をしてもらって、そうして出来上がるのが取材記事というもの。「取材に行った新人がボンクラだったので、やっぱりベタ記事扱いにしました、ごめんなさい」じゃ済まないだろ。「知り合い相手の取材だから、そこはなんとかなりました」では、ますますもってプロ的でないし。

まぁとにかく室井滋の編集長が全くもってウソくさいのだ。倉科カナが書いてくる企画書を没にして、欲しいのは「心にハッ・ヘッ・トとくるネタ」だ、とかのたまう。意味わかります? 倉科カナにはわからない。私にもわからない。あなたにもわからないだろう。だからおそらく、ターゲット読者層にもわからない……って、それじゃダメじゃん

企画の要点を、部下にさえ伝えられないなら、読者相手に伝わるわけが無いのだ。え? 「企画方針でなく実際の誌面で読者を獲得するのだ」だって? しかしそこは譲ったとして、「じゃあ広告営業はどうすんの」という話になる。

そもそも、ふつうの人では抽象的な言葉でしか表現できないものを、簡潔明瞭かつ深く印象に残る短い言葉で表現するのが編集者の仕事。ライター兼務でない編集者であれ、それは変わらない。あの編集長は一体、企画書や広告営業用の媒体資料(雑誌の概要)には、雑誌や記事のコンセプトをどう書いているのだろう? やっぱり「ハ・ヘ・ト」なのか?

そういうわけで視聴は止めたのだが、まぁそんな細かいことなどいちいち気にせず、ただ倉科カナの胸でも眺めていればいいんだろうね。