/五島勉以前のノストラダムス

妖怪人間ベム大全

妖怪人間ベム大全

1968年版「妖怪人間ベム」、「妖怪人間ベムPARTII」(1982年)、2006年版「妖怪人間ベム」について、大全の名に相応しく詳細に解説。各話のストーリーダイジェスト、設定画は当然のように網羅するほか、それぞれの企画書および企画成立の経緯についても細かい。68年版に関しては小林清志(ベム)・森ひろ子(ベラ)・清水マリ(ベロ)の、06年版については主要スタッフの座談会を収録している。さらに、1993年〜95年に「少年ガンガン」に連載された漫画『妖怪人間ベムリターンズ』についても2ページをかけて紹介、ケンミンの焼ビーフンCMまでカバーしており、スタッフの熱意が伝わってくる(ただし、06年に『ヤングジャンプ』に掲載された漫画版はなぜか完全に無視されている)。
欲を言えば、後年第4話が改題されたことや、第9話のラストが改変されたことにもふれて欲しかった。
と、ここまでは前置き。本題はp70、68年版第13話「ミイラの沼」の脚注だ。

絵コンテには千年に一度、金星の光を反射した月の光のことを「ノストラダムスの光」と呼んでいた。それについては特に説明もなく、当時の流行を反映したものだと思われる。

ちょっと待て! その絵コンテが描かれたのはどうあっても1967年12月以前だぞ!? 五島勉の『ノストラダムスの大予言』が世に出たのは6年も後の1973年11月。放映当時はまだ流行していない。いや、それどころか、当時はノストラダムスの名を知る者もほとんどいなかったのではないか? 
いったいどんな人物が、いかなる意図をもって書いたのか非常に気になるが、残念ながらスタッフは不明。いずれにせよ、五島勉以前に、ノストラダムスという名(単語)が、神秘性を帯びた言葉としてアニメに使われていた(フィルムでは使われなかったが…)という事実はとても興味深い。