大同人物語のひとつの終焉

率直に言って、アマチュアの特権に甘えたまま、しかし自覚的にそれを商業としている現在のコミケ及びその中核を成す同人には好感がもてない。しかしそれはそれとして、やはり米沢嘉博氏の業績は疑いようもなく賞賛に値するものでしょう。謹んで故人のご冥福をお祈りいたします。
それにしても、今年出れば御の字といっていた平野耕太の『大同人物語 完全版』が今年中に出たなら、併せて一時代を振り返る機会となりそうだ。ワニブックス版は手元にあるのだが、今読み返してみると、この作品に描かれた同人界、オタクどもの姿も既に歴史の一部というかなんというか。もちろんこれはフィクションなんですが、まぁ今は平和でヌルい時代だなァと思いますよホントに。
だから今あえて大同人物語を世に出すなら、現代のヌルい状況を踏まえた上での、『黄金の夜明け』再興や、明智たちの反乱の「歴史的意義」を問うようなエピローグが加筆されてるといいなァと思う。描かれた当時は無かった(よね?)コミケの企業ブースが完全に定着してたりもするし、当時は転売屋なんてのもまだ多くは無かったか? かつて「鋼鉄の意志の古参兵」と謳われた「目当てのサークルの本をどんな手段を使っても手に入れる百戦錬磨の「オタク」」が、情熱を失いながらしかしそのスキルにしがみつき、今では転売屋に成り下がっている……、なんてドラマも見てみたい。