ゾイドジェネシス#31「残された者」感想

戦争をしている以上は犠牲者がいる、遺される者がいる。そして、遺された者に怨みを向けられることもある。ルージはそれをすら背負っていかなければならないのだ……という狙いどころは面白いのだが、設定〜展開を整理しきれず、いわゆる超脚本になってしまった回。

「どうして俺がディンガの仇なんですか!?」 全くもってそのとおりで、最初は「味方を捨てて逃げ出した卑怯者」と言っていたのに、中盤では「青いライガーが手柄をひとりじめしようとあせって、味方にとんでもない被害を出した」、最後は「自分の手柄のために味方を犠牲にするような奴」……どれなんだよ、オイ。こんないいかげんなことで仇といわれては、さすがにルージが気の毒だ。大体、ディガルドが多額の賞金をつけてるのだから、逃げ出したり、あせって味方に被害を出すような人間でないことはわかりそうなもの。「青いライガーは味方を騙して囮に使って、その犠牲の上で手柄をひとりじめにした」くらいの誤解にしとけばいいものを。

ロンの「ルージ君がどんな人間かわかってもらうためには、ゾイドで戦うのが一番だと思ってね」という超発想もムチャクチャで、都合よくディガルドが乱入してこなかったら「他人のために自分を犠牲にする奴」だ、なんて何時間戦ったってわかりっこないと思うぞ(苦笑)。

悲劇のヒロインのはずのガボールがまた色々と足りない御仁で、「こっちだ!」とライガーを誘導→「しまった、行き止まりか!」→「焼きがまわったもんだ、こんな罠にはまるなんて」……少しはルージを巻き込んだことを反省しろ。「お前となら共にディガルドと戦うことができる」……まずは誤解から命を狙っていたことを詫びろよ。まぁ手柄をひとりじめしようとあせって味方に多大な被害を出した我侭野郎とは、割れ鍋にとじ蓋といったところか。

脚本の久島一仁はかなりのベテランだから、根本的な力量不足ではなくゲスト脚本家ゆえに勝手がわからなかったからだ、と思いたいところだが……。

【小ネタ】
一人だけ何故か美形に描かれているルージも可笑しいが、怒りの形相のミィに(そっくりじゃん…)と心でつぶやくのが、お約束ながら笑った。「うっかり踏み込んだが最後、噴出す高温高圧の蒸気に翻弄され、生きて帰れぬ己のうかつさに恐怖より怒りを感じる、それがこの怒りの谷だ!」この無駄に長い説明台詞にもちょっと笑った。

ゾイド
本来の「ジェネシス」商品カラーのブラストルタイガー(ティゼの乗機は配色が異なる)にそれなりの出番。しかし今回も必殺技は披露せず。ムラサメライガーは前足のパイルバンカーを地面に打ち込んで急激な方向転換をしながらの「回転斬り」を披露。ハヤテライガーがメガラプトルを斬るときの動きもなかなかトリッキーで、アクションにちょっとしたアクセントが盛り込まれているのが楽しい。バンブリアン久々の大活躍。槍と鉄球は普通にかっこよかったが、格闘でのもっさりした動きは狙った演出なのか見せ方がまずいだけなのか? バイオゾイドの一群、友軍機が槍に吹き飛ばされると一斉にそっちを向いて、つづいて「何?」とばかりに槍が来たほうを向くのが可愛かった。四天王以外のまともな人間がバイオゾイドに乗っているのは今回が初めてですな。