「エネルギーは手塚治虫由来」伝説

「 energy を エネルギー と書くのは手塚治虫が原点」という伝説がある。

また、今日普通に使っている『エネルギー』という言葉を
日本に紹介したのも手塚氏だという話も聞いたことがあります。
("燃料"は英語で"エナジー"ですが、手塚氏が医学生
経験していたのでドイツ語の"エネルギー"としたという説です)
(回答日時:2002/08/13 ) 
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/334567.html

↑これなどは伝聞扱いだが……。

鉄腕アトム(エネルギーという言葉を定着させる。日本人からロボットアレルギーを取り除く)
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Pastel/2563/shakaieikyou.htm

↑こちらは作品まで「鉄腕アトム」と特定し「社会的影響」を10段階の7と評価。
その出典は……。

何故、日本では英語でエナジーと言わずドイツ語でエネルギーと言うのでしょう。それは、手塚治虫がエネルギーと言ったからです。

エネルギーという言葉は手塚治虫が「鉄腕アトム」で使って広まった。医師免許を持っていた手塚治虫が好んでドイツ語を使用したため。

とあるが、リンク先は2件とも死んでいる。
そのほか、

エナジーとエネルギーについて
手塚治虫さんが改名したそうなんですが・・・理由は?
(2010/8/29)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1146084821

↑これなどはもう事実という扱いで、そのうえ理由を聞いている。
 
かく言う私も疑ってなかったが、これが全くのデタラメだと判明した。
なんてこたぁない、国会図書館サーチで「エネルギー」を検索すればいい。
http://iss.ndl.go.jp/

1891年(明治24年)の『新編物理学』から「エネルギー」だ(「ネ」が「子」の形の変体仮名)。この後、途中で廃れたりすることもなく、ずーっと「エネルギー」のまま。一方で「エナジー」の検索結果はほとんど無く、1930年の論文が1件、1952年の雑誌が1件、あとは60年代以降だ。
 
「いやいや、60年代まで『エネルギー』は専門用語だったのを、手塚治虫のマンガがポピュラーにしたんだよ」なんて人もいそうだが、それもまずNG。自然科学とはおよそ無関係な『神都教学館趣意書』(1939年=昭和14年)にも……。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1093694

「温い心と純愛の努力こそ、太陽の持つエネルギーの熱情であり」云々と書かれており、まぁ普通に使われていた様子。
 
さて、誰が一体、いつ「 energy を エネルギー と書くのは手塚治虫が原点」などと言い出したんだろう? 手塚治虫研究者は多いが、こういう部分にアプローチしてる人はいないのだろうか。