『世界の軍用機』を複数所有する理由

F-16XLという戦闘機(試作機)がある。

スカンクモデル 1/48 F-16XL試作戦術戦闘機 プラモデル

スカンクモデル 1/48 F-16XL試作戦術戦闘機 プラモデル

今年になって唐突に完全新規の1/48のプラモデルが発売される程度には人気がある戦闘機だ。
さてこのF-16XL、F-15Eとの競作に敗れて試作のみに終わったが、その後も一時期「F-16の後期量産型はこの形になる」と言われていた。
今から2年前に私が上げた質問はこんな内容だ。
http://okwave.jp/qa/q8076911.html

F-16XLが不採用になったのは何故?

『世界の軍用機1983』(航空ジャーナル社・1982年12月)の「ジェネラルダイナミックス F-16XL」の解説には、「F-16の量産後期型を、この発達型XLに生産転換することを(GD社は・引用者補足)望んでいるとみられる。空軍もこの開発計画を支持しているようで、F-16のFSDを2機とエンジンを貸与し、すでにF-16Eの名も割りあてているという」とあります。

ETFはF-15Eストライクイーグルが採用と決まった後の『ホビージャパン』84年12月号にも、「F-16E(XL)は極めて高性能の機体であり、その空戦/対地攻撃能力は現在のF-16Cに勝るものを持っているので、F-16シリーズの後期量産型はこの型になるだろう」と書かれています。

しかしその後、F-16はC型のまま改良が繰り返され、E型の名称は対アラブ輸出仕様に割り当てられてしまいました。

ふつうに考えれば、コスト面の問題だと推察されるのですが、『世界の軍用機1983』には、「F-16とはずいぶん違って見えるが、実際には構造、システムの共通性は90%もあり、F-16自体がモジュラー方式とFBW操縦方式を持っているので、開発も生産転換も極めて容易だという」ともあります。これを読む限り、半ば決定していた量産化が覆されるほどに高コストとは思われません。

また、後にNASAのもとで10年以上も実験機として用いられたのですから、それ相応のポテンシャルを持つ機体だと思われます。

にも関わらず、F-16XL(F-16E)の採用は見送られ、C型の改良で十分と判断されたのはいつ頃、なぜなのでしょうか。

この質問には回答がひとつ付いたが、それは満足のいくものでなく、以後は放置されている。
さて、ここで先日の古書市で『世界の軍用機1985』を買った、という話になる。『1983』を所有しているのに、九割がた同じ内容の『1985』を何故買ったのか。その理由のひとつがF-16XLなのだ。
『1983』では「F-16の量産後期型を、この発達型XLに生産転換する……空軍もこの開発計画を支持」とまで書かれていたが、『1985』ではこんな調子だ。

(略)空軍の評価試験を受け、採用はF-15Eに譲ったが、その優秀さと将来性を買われて、今後も開発と評価の継続が決まったもの。

これだけ読むと優秀かつ将来性があるように感じるが、量産が半ば確定していたかのような『1983』の記述に比べるとずいぶん後退している。

『世界の軍用機1983』と『1985』(と持ってないけど『1984』)、九割がた同じ内容だからこそ、残り一割に注目することで見えてくることがあるのである。

その他、『1983』は実家だから細かな確認はできないが、『1983』ではA-10もどきで主翼上面にエンジンが配置された"ラムJ"だったのが、『1985』ではA-9もどきのSu-25"フロッグフット"になっていたり、『1983』には載っていた"F-18L"(陸上基地仕様のF-18)が『1985』では影も形も無かったりと、その差異はかなり面白い。
 
それと、なにも年次違いで複数所有しないと面白味が無い、というわけでもない。
せっかくだから『世界の軍用機1977』のほうから引用しよう。国産の双発ジェット輸送機「川粼C-1」の記事、その締めの部分だ。

ターボファン化による燃料消費の減少と、翼内のインテグラルタンクに燃料を12トンも搭載できるため、STOL性能を重視した機体にもかかわらず大きな航続性能をもち、東京からグアム、マニラへ、グアムからハワイへ直行できる能力をもっていることも本機の特色といえる。

なんと、航続距離の長さが特色として評価されているのである。
今となっては「航続距離の短さが重大な欠点」といわれるC-1だが(また、実際に自衛隊はC-130を導入せざるを得なかったわけだが)、一時は専門誌の別冊にこう評価されていたことも知っておくべきであろう。