松本電鉄社員寮・解体

去年の1月に見てきた「松本電鉄社員寮」が……。
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20140108




8月には跡形なく解体撤去されていたそうだ。

2014/08/11
先回訪れた時には在った変電所(松本電鉄社員寮)は跡形も無く、わずかに配管が放置されているだけ・・・
 
(「鉄道写真・無軸」松本電鉄
 http://musikfest.ran-maru.net/page86i.html

寂しい話ではあるが、外見からも著しい老朽化が見て取れたし、補強工事を施してまで残すほどの建物でもなかろうし、解体もやむなしといったところか……いや待て。

この謎が謎のままだ。

壁の一部が剥がれて内の建材が露出していた。これを見るに、レンガのような形のコンクリートブロックを、レンガのように積み上げて建てられているようだ。鉄筋コンクリート造でもレンガ造でもなく、いわゆる「ブロック塀」のブロックでもなく、かなり珍しい建築構造と思われるのだが、今のところまだ詳細はわからない。

さっぱり手がかりが無いため、これは「中村式鉄筋コンクリート」では無いとわかっていても、その単語でググるしかない。
そして「中村鎭による「中村式鉄筋コンクリート」の考案とその実際例」というPDFのレポートに行き当たる。
http://www.hues.kyushu-u.ac.jp/education/student/pdf/2009/2HE08072Y.pdf
おっと。「2-2.鉄筋ブロック造分類」にソレっぽいのがあるぞ? いや、違う。松本電鉄社員寮のブロックははっきりイギリス積だ。煉瓦と同じ使い方で、おそらく鉄筋の入っていないコンクリートブロック造だ。
そんな建物があるのか? あの大きさで?
上記レポートの参考文献「旧東京市古石場住宅の解体記録 : 大正期のブロック構法における位置づけ」……
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004151555
のタイトルから「大正期のブロック構法」というキーワードを抽出してググる
CiNiiに「大正期に建設されたコンクリートブロック造建築物における構工法とブロック形状について」という論文があるので…
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006329358
その副題から「小野田セメント山手倶楽部」というキーワードを抽出してググる

おお、「小野田セメント山手倶楽部」はどうやら鉄筋無しの「コンクリートブロック造」のようだ。
だが肝心のブロックが一見してブロックとわかるとおり大形で、松本電鉄社員寮のそれとは全く異なっている。1080円ナリで購入すればくだんの論文は読めるのだが、私の知りたいこととは直接の関係が無い、それどころか全く触れてなくてもおかしくないものにそこまでお金は出せないよ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009637282
これもたぶん上と同内容。

ともあれ、「大正時代のブロック建築は大変珍しい」という理由で小野田セメント山手倶楽部が国の登録有形文化財ならば、松本電鉄社員寮だって同等の価値はありそうなもの。貴重かどうかは知らないが希少だったのは確かだ。改めて解体が惜しまれる。

仮に私の見立てどおり、「レンガのような形のコンクリートブロックを、レンガのようにイギリス積で積み上げた建物」であるならば ・そのブロックを作ったメーカー(セメント会社)はどこか。・これ以外に導入実績は無かったのか。・日本初のコンクリートブロック造建築「小野田セメント山手倶楽部」には、レンガとは全く規格の異なるブロックが用いられている。どちらが主流だったのか。・竣工は1920年代初めとみられる(未確認だが1923年説あり)が、1923年の関東大震災によってレンガ造の耐震性の低さが改めて問題視された。同様に鉄筋が入っていないこの建造法も震災以後には用いられなかったのではないか。・となるとこれ、現存(してないけど)唯一のレンガ形コンクリートブロック造建築なのでは!? とか、色々と調査すべき事項が浮かび上がってくる。

……といってもまぁ、私が根本的に見立て違いをしていて、実は割と普通に鉄筋コンクリート造だったり、白いけど煉瓦だったりするのかもしれないけどね。
(↓関連エントリ「煉瓦形コンクリブロックで新情報」)
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20160202
 
(↓関連エントリ「松本電鉄社員寮を取り上げた記事ふたつ」)
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20160111
 
(↓関連エントリ「高知の煉瓦形コンクリブロック塀」)
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20151031/