松枝尚嗣「シバのヨル」

表紙が松枝尚嗣の絵だったので「漫画サンデー」を購入。すでに連載4話目なのか。じゃあ「ダシマスター」再開は無いってことだな。集英社なのかグランドジャンプ編集部なのかは知らないが「作家を守らないんだな」という印象が強くなった。

ていうか、「銀魂」は何事もなかったように続けてるじゃん。なにこのダブスタ? いや、ダブスタどころではない。無関係な人間が無責任に騒ぎ立てただけの「ダシマスター」と、被害者の飼葉駿が怒りを公然としていた「銀魂」とで、どちらがより深刻な事態かなど比べるべくもない。だが前者は打ち切りで後者は継続。謝罪も釈明もなく、それどころかカバー折り返しで挑発までしている。つまりマイナー漫画家をなめきっているのだ。クソめ。

銀魂」パクリ事件は今更なのでさておくとして「ダシマスター」だが、あれはよくも悪くも教科書通りのお行儀の良い料理マンガだった。クオリティは高いし安心して読めるんだけど物足りなさを感じていたから、無責任なファンとしては、全く路線が異なる新作が読めてうれしいという気持ちもある。それに松枝先生、ストーリーや設定も自身できちんと組み立てられる漫画家だから、原作無しで企画物でもない新作を待っていたのよ。なまじ絵が巧いもんだから、映画やゲームの漫画化とかの企画物をまかされるケースが妙に多い……ってあれ? ひょっとして完全オリジナルは「B-DASH」以来か?

さて、この「シバのヨル」。

警視庁の健康管理本部に勤務する臨床心理士の紫葉拓未。彼は法では裁けない罪人を独自の薬を用いて罰する裏の顔を持っていた。

てな設定。「必殺」シリーズか「ハングマン」、マンガだと細野不二彦の「ジャッジ」か、それこそ「B-DASH」を思わせる設定だ。
しかし、

だがそれは、己の趣味を満たすためだけのものであり、彼にとっての「正義」とは「実験」のための言い訳でしかなかった。

てな感じで勧善懲悪物でなく、サイコクライム物がベースなのがミソ。時期が時期だけに、「ゲスで執拗な言いがかりで他人のクリエイティブの足を引っ張り、掲載誌の看板に育ちかけていたマンガを潰してしまうようなクズをまず何とかしたいんだろうなぁ」などと勘繰ってしまうが、まぁそういう話ではない。

第4話ではヒロイン(?)に付きまとうストーカーが犠牲者となった。この回だけ読んでも前後の脈絡などはわからないが、主人公の静かな狂気はキャラが立っているし、ヒロインにも何か裏の顔があるように匂わされたり、主人公以外にも「法で裁けない罪人を罰する者」の存在が匂わされたりで、なかなか面白くなりそうだ。

隔週刊誌の連載だと読み逃すことがままありそうで、早々な単行本化を望みたい。