チャンピオン読者の私が選ぶ!このマンガが面白い!2012

今年も「漫画脳」が開催されているランキング企画、「チャンピオン読者が選ぶ!このマンガが面白い!2012」に参加します。
http://blog.livedoor.jp/manganou/archives/51807114.html

去年はこんな感じ。
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20110115
 
以下、まずはランキングを書き出し、作品評は後にまとめました。
 
秋田書店作品部門(週チャン作品除く)
 ※エントリーできる作品自体が少ないので、1位のみ選出。
1位「猫神やおよろずFLIPFLOPs(掲載誌:チャンピオンRED
 
秋田書店以外部門
1位「となりの関くん森繁拓真(掲載誌:コミックフラッパー
2位「グラゼニ」原作:森高夕次 漫画:アダチケイジ(掲載誌:コミックモーニング)
3位「銀の匙 Silver Spoon荒川弘(掲載誌:週刊少年サンデー
 
週刊少年チャンピオン部門
1位「ナンバデッドエンド」
2位「バチバチ
3位「ブラック・ジャック創作秘話」
4位「空が灰色だから
5位「被害妄想少女うれいの日常」
ほか、単行本を買っている作品に「侵略!イカ娘」「はみどる」「行徳魚屋浪漫スーパーバイトJ」「りびんぐでっど!」。

2011年の「週刊少年チャンピオン」は、「範馬刃牙」ではこれまで散々引っ張ってきた父子対決がついに実現、「イカ娘」はアニメ第2期に伴い関連商品を大展開、「弱虫ペダル」舞台化、「空が灰色だから」連載開始、そして「ブラック・ジャック創作秘話」が「このマンガがすごい!」第1位に選出されるなど、色々と展望が開ける話題もあったものの、総じてちょっと苦しい時期に入ったかなと思えます。

不発に終わった新連載・短期集中連載が多めで、その一方「みつどもえ」がいつ再開するともつかない休載となり、3Starsの一角だった「ケルベロス」が不可解な打ち切り終了を迎えるなど、次の看板がなかなか見えない感じ。特に、「自分でも絵が描けるベテラン漫画家をあえて原作のみとし、若手の作画と組み合わせる」という得意技が、青山広美永久保貴一永井豪と誰についてもパッとしなかったのが寂しい限り(ここらへんの作品は、本誌での人気がどうあれ単行本は出す契約かと思っていたら、どれも出なかったね。「ビジンマン」なんてどうみてもページ数合わせの再連載だったんだが)。

ただしそれでも、現状で残っている連載作品で読む気にならないのは3作品だけ、世間的にはそれらも人気作ですから(あえてタイトルは上げない)相変わらずの高アベレージといえるでしょう。
 
■作品評/秋田書店作品部門(週チャン作品除く)
 
1位猫神やおよろず

猫神やおよろず 1 (チャンピオンREDコミックス)

猫神やおよろず 1 (チャンピオンREDコミックス)

♪かみさま〜といつもい〜っしょに ゆかいにな〜る おてつだい ……アニメがなんとなく気に入ってしまい、単行本も揃えてしまった。正直、アニメのほうがコメディとして冴えているのだけれど、それも原作があってこそ。原作には、アニメでは丸ごとカットされたシリアスな展開があって、そちらでも気を持たせてくれます。
 
■作品評/秋田書店以外部門
 
1位となりの関くん
「チャンピオン読者が選ぶ」という主旨なので、かつて「アイホシモドキ」を連載していた森繁拓真の新作を1位に推す。

授業中に教室の机で一人で遊んでいる(のを横から見ている)だけのマンガで、せせこましくて、でもスケールがでかくて、「あるある」感があって、なのに全く予想がつかず、一話完結でスッキリ短くまとまっています。少々大げさだけど「マンガにはまだこんな可能性があったのか!」くらいの衝撃を受けた。新しいのはネタだけで、表現や構成、台詞回しなどはごくオーソドックスなんだけど、だからこそ凄いといえます。

それにしても悔しいのは、こういうヘンテコな才能を引き出してこそ「チャンピオン」なのに、他誌に行ってから開花しちゃったことだ。
 
2位グラゼニ

グラゼニ (1)

グラゼニ (1)

グラゼニ(2) (モーニング KC)

グラゼニ(2) (モーニング KC)

グラゼニ(3) (モーニング KC)

グラゼニ(3) (モーニング KC)

「チャンピオン読者が選ぶ」という主旨なので、「ショー☆バン」や「ストライプブルー」でおなじみ、森高夕次原作の作品を選んだ。

森高夕次プロ野球への愛と知識がてんと盛られた作品。年収1800万円の中継ぎピッチャー、などという中途半端な冴えない男を主人公にして、ここまで面白いマンガが描けるのはこの人くらいでしょう。

しかしまぁ面白い作品ではあるのだけれど、通好みというかマニアックで、まさか「このマンガがすごい!」で2位に選出されるとは思ってなかったよ。
 
3位銀の匙 Silver Spoon

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)

「チャンピオン読者が選ぶ」という主旨なので……んー、さすがに関連づけられなかった。念のため、「関くん」も「グラゼニ」も、チャンピオン縛り抜きにしてもやっぱり1、2位ですよ。

閑話休題、「巧い人はどこで何を描かせても巧い」という当たり前の事実に圧倒される。もとより自家薬籠中に収めていた北海道の農業ネタだが、それにしても、だ。「自分探し」的な青春もののストーリーを基調としつつ、綺麗事を言っていられない畜産の現場の「生と死」というテーマを織り込み、しかしコメディとして気楽に読める。よくもこれだけの作品が描けるものだ。
 
選外(4位)「ひまスペ兎!」
募集が始まる前に5位まで選出済みで、ひととおりコメントも用意していたので、当ブログでのみ有効な4位ってことで。

ほのかな百合の香りを漂わせつつ、宇宙貨物船の乗組員であるヒロインたちがただ暇つぶしをするだけ、というショートコミックなのだが、これが実になんともSF。というか「あ〜、SFってこうだよね〜」という懐かしい気分にさせてくれる。理詰めで説得力十分なのに、色々と根本の部分がバカバカしい無重力ゴキブリの話がお気に入り。はやく単行本にしてほしい。中島諭宇樹はこのほか、去年ベストワンに選出した「エレメントハンター」に続き「デジモンクロスウォーズ」も見事にコミカライズ。

デジモンクロスウォーズ 1 (ジャンプコミックス)

デジモンクロスウォーズ 1 (ジャンプコミックス)

デジモンクロスウォーズ 2 (ジャンプコミックス)

デジモンクロスウォーズ 2 (ジャンプコミックス)

デジモンクロスウォーズ 3 (ジャンプコミックス)

デジモンクロスウォーズ 3 (ジャンプコミックス)

デジモンXW」は自信を持って「元のアニメよりマンガのほうが面白い」と言えます。こちらもSFセンスが炸裂しており、元のアニメでは「なんとなく何でもありの異世界」でしかないデジタルワールドの設定を、かなり深く突き詰めています。
 
選外(5位)めだかボックス
めだかボックス 13 (ジャンプコミックス)

めだかボックス 13 (ジャンプコミックス)

前年も選んだ作品だが面白いんだから仕方ない。「主人公」にはどうあってもかなわない、それをどう勝つか? という話をギリギリの線で物語内で料理しているところが巧いのだが、ギリギリの線を踏み外しそうな危なっかしさがまた面白い。

ただ、球磨川の死に関する種明かしや、球磨川以上に何でもありの不知火半纏のスキルなど、2011年終盤になって安易な設定・展開が目立つ(ご都合主義に説得力を付与できていない)のが残念。読切の「グッドルーザー球磨川」もイマイチでした。
 
■作品評/週刊少年チャンピオン部門
 
1位「ナンバデッドエンド」

ナンバデッドエンド 15 (少年チャンピオン・コミックス)

ナンバデッドエンド 15 (少年チャンピオン・コミックス)

前年と同じ作品を1位にするのは避けたかったけれど、それでも選ばざるを得ない。

終盤、兄貴が瀕死の重傷を負ってからの展開はあまりに重苦しいし、その割に決着は少々予定調和的でアッサリしていて、連載中は蛇足と思えたけれど、終わってみれば「あれも必要なエピソードだったな」と思える。

前年の「健全な社会の成員が不良の更正を拒む」という展開をさらに引っ張り、「結局、不良の受け皿になるのは暴力団だけ」という冷たい現実にまで行き着きながら、それでも暴力団を肯定的に描かなかったのがエラい。しかも、暴力団入りをほごにされる理由(建前だけどね)が「シャバ臭いから」だという。

つまり、「暴力団という究極のデッドエンドに直面したナンバを救ったのは、娑婆で築いてきた友情だった」ということで、健全な社会に対する疑義を示しつつ、それでも最後は極めて健全な価値観に落着したのが見事でした。
 
2位バチバチ

バチバチ 13 (少年チャンピオン・コミックス)

バチバチ 13 (少年チャンピオン・コミックス)

前年と同じ作品を(ry

これまで丹念に描き込んできた「空流部屋」のあり方が、同部屋対決へと収斂されていく2011年後半からの展開は、全く目が離せない(現在進行形)。天雷やドングリ、蒼希狼など、鯉太郎の同期たちの群像劇としても濃密。惜しいのは、本来なら鯉太郎の終生のライバルとなるはずの王虎がなかなか復活できぬままでいること。これについては2012年の展開に期待しましょう。
 
3位ブラック・ジャック創作秘話」

「ダメ過ぎるぜ手塚治虫!」と「さすが神様だぜ手塚治虫!」の振幅の演出が実に巧妙。手塚治虫という人のオカシさに支えられている作品ですが、構成力というか演出力も高く評価できます。

ただ、永井豪の話に引きずられて焦点がぼやけてしまった最終回など、その構成が綻びがちなのが残念。取材で聞いてきた面白い話をできる限り盛り込みたい、という気持ちはわかるけれど、それを適当に切り落としてこそ完成度が上がるのでは? 現在連載している分は、そのあたりのバランスがいよいよ危うくなっているように感じます。
 
4位空が灰色だから
恐るべき新連載。こういう才能が現れるから「チャンピオン」は目が離せない。

単行本は間違いなくマンガ好きの間で話題になって、けれど4巻分続いたところでぷいと終了して、何故に打ち切り? とか心配してると半年も空けずに他社で阿部共実の新連載が始まって、それは「空が灰色だから」からのファンには手抜きに見えるんだけど、世間一般でウケるにはいい具合に力の抜けた作品でヒット作となり、単館上映ながら映画化されたり深夜アニメになったりでロングセラーとなるも、じきに飽きられて、「最近見ないねぇ」「まだ続いているんだっけ?」と思っているとチャンピオンに復帰する、と予想。
 
5位「被害妄想少女うれいの日常」
2011年の「ここで名前を出しておかないと私自身忘れてしまいそうな作品」枠で第5位に選出。本誌未掲載分を同人誌にして売ってたそうで、知っていたら夏コミに行ったのになー(といいつつ冬コミでどうだったかチェックしてなかったり。なんと「とらのあな」で扱ってるそうですが、通販で買おうとしたらアメックスが使えなくて一時断念。店頭の在庫探すのは手間だしなぁ)。

被害妄想にとらわれがちな主人公と、それとは対照的な木良くにね(気楽にね)や松田りな(まったりな)の掛け合いだけで十分可笑しかったんだけど、あまりウケなかったのかな。連載終盤は大家さんが話の牽引役になってしまったあたりに迷走を感じます。作品の核は被害妄想のままにして欲しかった。うれいが妄想するようなことを、現実に体験してしまっている古塀すな乃(フルフェイスなの)、なんていくらでも転がしようがある出色のアイデアだったと思うんだがなー。

このほか、ショートコミックでは「侵略!イカ娘」の安定感、「はみどる」の大団円、「行徳魚屋浪漫スーパーバイトJ」のペーソス、「りびんぐでっど!」のグロ可愛さはいずれも捨て難い。ストーリーものでも、「ANGEL VOICE」、「囚人リク」、「聖闘士星矢冥王神話外伝」などは毎週楽しみにしている。
……これでなんで4誌中4番手に甘んじているんだろう。(←決まり文句にしたいらしい)