幕末世界 〜攘夷〜

ギギ…ケアケア…
ギャゲエッ アゲエッ ギェエエッ
ギェ… ゲエエエッ

「攘夷ッ」

幕末世界~攘夷 (キングシリーズ 漫画スーパーワイド)

幕末世界~攘夷 (キングシリーズ 漫画スーパーワイド)

ちょっと腹の足しになるものを、と何となく入ったコンビニに、ひょいとあのカルト的な怪作が置かれているのだから世の中たまらない。以前、「森田信吾色々とかなりアレな幕末物を描いていた」と聞き、一時は私も購入を検討したのですが、結構なプレミアがついていたため断念した作品です。

「幕末期、無知な町人に化け物と噂されていた夷狄(西欧人)の英語教師が、本当にバケモノだった」という、まぁ一発ネタで突っ走っていく作品と言っていい。

しかし、その突っ走り方が尋常でなく、クライマックスは雲取山の中から出てきた巨大な大砲で、冨士山麓に築かれた夷狄の要塞を狙う、世界の存亡を賭けた砲撃戦にまで発展します。

一応、夷狄に染まった大ボスが「(夷狄で埋めつくされた世界は)おそらく自由の世と呼ばれるであろう……」と言えば、武士として戦う主人公が「なるほど! さぞかし猿の世、虫の世であろう。互いにつかみ合いをし、ギャアギャアとわめき合い、意味も無くバタバタと転げまわる…。品の無い調和の崩れたあさましき世であるにちがいなかろう!」と切り返す、という西欧文化批判(近代化批判)的なテーマもあるんですが、基本はマァ変てこなイメージの奔流と、華麗な剣戟アクションを楽しむ作品。

さすが森田信吾というべきか、絵は安定してるし、チャンバラの見せ方は心得たものだし、この作品ではコピーの使用は控えめ(苦笑)。グログロで「得体が知れない」というよりほか無い夷狄(と呼ばれるバケモノ)のデザインも見事なんですが、その夷狄を討つ道を示す「宇津々気の神」が、なぜか聖母像みたいな姿だったり、しかも神として語るのは抱えられた赤子のほうだったり(ある意味当然ではある)、そのまわりを飛んでるのは天使なのに「カアッ カアッ」と鳴く八咫烏だったり、なんか色々と大変な作品ですわ。