ギギ…ケアケア…
ギャゲエッ アゲエッ ギェエエッ
ギェ… ゲエエエッ
「攘夷ッ」
- 作者: 森田信吾
- 出版社/メーカー: 小池書院
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: コミック
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「幕末期、無知な町人に化け物と噂されていた夷狄(西欧人)の英語教師が、本当にバケモノだった」という、まぁ一発ネタで突っ走っていく作品と言っていい。
しかし、その突っ走り方が尋常でなく、クライマックスは雲取山の中から出てきた巨大な大砲で、冨士山麓に築かれた夷狄の要塞を狙う、世界の存亡を賭けた砲撃戦にまで発展します。
一応、夷狄に染まった大ボスが「(夷狄で埋めつくされた世界は)おそらく自由の世と呼ばれるであろう……」と言えば、武士として戦う主人公が「なるほど! さぞかし猿の世、虫の世であろう。互いにつかみ合いをし、ギャアギャアとわめき合い、意味も無くバタバタと転げまわる…。品の無い調和の崩れたあさましき世であるにちがいなかろう!」と切り返す、という西欧文化批判(近代化批判)的なテーマもあるんですが、基本はマァ変てこなイメージの奔流と、華麗な剣戟アクションを楽しむ作品。
さすが森田信吾というべきか、絵は安定してるし、チャンバラの見せ方は心得たものだし、この作品ではコピーの使用は控えめ(苦笑)。グログロで「得体が知れない」というよりほか無い夷狄(と呼ばれるバケモノ)のデザインも見事なんですが、その夷狄を討つ道を示す「宇津々気の神」が、なぜか聖母像みたいな姿だったり、しかも神として語るのは抱えられた赤子のほうだったり(ある意味当然ではある)、そのまわりを飛んでるのは天使なのに「カアッ カアッ」と鳴く八咫烏だったり、なんか色々と大変な作品ですわ。