書店員の不思議

例えば魚屋だの八百屋などは「へいらっしゃい、今日は脂の乗ったいい○○が入ってるよ!」「その○○は今年初出荷の××産だよ! ハウス栽培とは味が違う」てな調子で、その日入荷したもの・売っているものをきちんと把握している。
例えば玩具店(ていうかトイホビーショップですか)など趣味性の強い店では、ある商品が発売予定日に店先に並んでいない場合、店員にきけば多少待たされるにせよ「すみません、当店は○社の商品は取り扱っていないんです」とか「当店には明日入荷の予定です」とか「あれは入荷数が少なくて…売り切れてしまいました。次回入荷は1週間後ですが確定ではないので予約は受け付けられないんです、申し訳ありません」とか、相応の答が返ってくる。
専門店ではなく取扱商品種目の多いコンビニエンスストアはPOSによって機械的に入荷状況・販売状況を把握している。
ところが何故か書店員は、商品の入荷予定を把握していない、入荷状況を把握していない、売り切れたか入荷してないのかの別すらわからない。となれば商品の中身だって知っているわけがない。
これが不思議でならない。入荷予定を把握していなければ売り場スペースをどう構成したものか判断付きかねるだろうし、何が入荷したのか何が売れているのかわからないようでは、まず商売になるまい。
別に、「レジ担当者の全てが即答すべきだ」なんて無理を言うつもりは無いのだ。また、店主以外は学生アルバイトしかいないような小さな店にだってそこまで期待していない。
しかし、日本国中にその名の知られた有名な大型書店の、各専門フロアにおいて、「○○の入荷予定はありますか」「今日発売予定だった○○が置いていないんですが、入荷してないんですかそれとも売り切れたんですか」という、ごく当たり前の質問に対して、10分以上も待たせた挙げ句に「わかりません」としか答えられない、というのはさすがに小売業として異常ではないだろうか。通常は流通ルートに乗らないような特殊な書籍・雑誌だったわけではない。「訊いたこちらの書名がうろ覚えだった」わけでもない。出版社・書名さらにはISBNコードさえ提示してなおわからないのである (2005年10月24日付エントリ)。
一体彼らの仕事とは何なのだろう?
この積年の疑問に、ようやく答が得られた。彼らはあまりに多過ぎる共同出版の入荷・返品の手間に追われ、個人による書店営業の対応に追われ、そのために小売業本来の業務を果たせずにいるのである (2008年1月23日付エントリコメント欄)。客が被る不利益は大きい。共同出版はそのあり方を見直すべき時期を迎えているといえよう。
まぁ原因が何であれ、我々消費者は書店に対してマトモなサービスを期待すべきでない、というのは確かだ。私はその現状を、ただありのままに受け止めたい。そうした有り様をあえて非難はしない。私にとって面白い本、私に有益な本は自分で見つけるから、書店はただ商品を並べて置いておくだけでもう充分。それ以上のことは期待しないし、すべきではないだろう。