みえるひと第7巻

みえるひと 7 (ジャンプコミックス)

みえるひと 7 (ジャンプコミックス)

不遇の作品『みえるひと』はこの7巻で完結。週刊連載分は1周年記念のセンターカラーだった第五十一譚から最終譚まで7話を収録。明神対ゴウメイ戦の続きから、パラノイドサーカスとひとまずの決着が着くまでが描かれています。
自分の過去の感想を読み返してみると……。
第五十一譚「明神とゴウメイのガチのぶつかり合いと、策の読み合いとが並行していて、なんだかふつうに面白いですよ?」はいいほうで、第五十二譚「さてどうなることやら」第五十三譚「ぶっちゃけ、白金の登場は失敗だった」第五十四譚「援護の案内屋・白金に、敵方のボスキャラ・キヨイと、2週連続での新キャラの到着なのに、両者に全く関連付けがないのはさすがにどうかと思う」……結構手厳しいな、私(苦笑)。
まぁ第五十六譚最終譚はベタ誉めで、そのあたりから作品全体の評価まで変わったのでしょう。実際、この終盤の展開は単行本でまとめてみてもやはり洗練されているという印象です。
もっとも、最終回で懸念した「絵柄、というかキャラクターの顔の不安定さ」は更に加速してしまったようで、単行本描き下ろしの番外編「NEVER END」の姫乃はまるきり別人に成り果てています。
ただしこの「NEVER END」、お話のほうはかなり面白く、基本設定について「え? (バレ→)夢オ チの続きなの?」という座りの悪さこそあるものの、ガクの「この後」の話などはもう、読みたくてたまりません。
特別編はさらにもう一本、待望の読切版『みえるひと』!! 初出時(04年第45号)に、某掲示板に書いた私の感想はこんな感じでした。(以下、読切版について重要なネタバレあり)





主力連載陣が振るわない分、このところ読み切りが一定以上のレベルを保っていて頼もしい。次の次くらいの連載の入れ替わりにはかなり期待できる。本作も、新人離れした達者な絵と、既存の枠組みに収まらないチャレンジブルな物語構成とで楽しませてくれた。
ただ、その叙述トリック(というか描写トリック)は反則ギリギリ。読者の視点はしぜんと「これから起こる事件に関して無知な主人公」と同じ高さに誘導されるが、その一方で実は語り手の視点(=読者の視点)には幽霊は見えている。このギャップを利用したミスリードは、マンガならではのトリックとして高く評価したい。
しかし、場面ごとの都合に合わせて見えたり見えなかったりなのに、そこで読者を錯誤させるのは問題だろう……ってまあ、こういう作劇の手法で考えさせられる(笑)マンガが出てきたってだけで充分満足ですが。

さらに当時から、「トリックをただの技巧自慢にせず、「身近な人物が実は…」の恐怖と「幽霊がすぐそばにいるのに気づけない」恐怖とを一体にして提供する働きをしている点がキモ」とも書いているのですが、いやもう今になって改めて読み返しても、このあたりは普通に怖いです。
最も古いこの作品が7巻収録分の中で最も面白い、というあたりに少しばかり問題を感じなくもないですが(苦笑)、岩代俊明の次回作は期待して待ちたいですな。