城物語

城物語 (BLADE COMICS)

城物語 (BLADE COMICS)

装丁と値段で画集のフリをして、開けてみれば中身はラフ画ばかりという詐欺まがい商品『LEGEND』(冨士宏ワルキューレ画集。ISBN:4861272424)を買ってしまって以来、「機会があればいつか火をつけてやる」と思っていた魔ッ愚ガーデン(誤変換だけど面白いからいいや)だったが……。いやあ、早まったことをしなくてよかった。本当によかった。あの、幻の名作『城物語』を単行本にしてくれました。
舞台は中世ドイツの片田舎。成り行きによって、破産寸前の小さな城の城主となった17歳の少年フォン・シュミートは、言うことをきかない騎士たちや隣の城からの侵攻に翻弄されつつも、一人の城主として成長していく……という物語。
現実の歴史に即しており、魔法や怪物は一切登場せず。歴史物ではあるけれど、舞台は(おそらく)架空のド田舎の町で有名人は一切登場せず。合戦も描かれるけれども、わずか50騎対50騎で、死人が出ないで終わってしまう……というまぁなんというか実に地味な物語だ。
ところがこれが滅法面白いのよ。歴史のうちの生活史や文化史の部分、あるいは民俗というものを、充分以上に踏まえていて。誤解をおそれずにいうなら、「ヴィンランド・サガ」(ISBN:4063635597)とおなじ地平にあって、しかし対局に位置する作品というべきもの。あるいは「辺境警備」(ISBN:4048528068)が好きだった人にも勧められるか。まぁ四の五の言わずに読んでみて欲しい。地味だけど。