私は以前から「ゴミ収集車のオルゴールの歴史」に少し興味をもっていたのだけれど、そもそもの「ゴミ収集の歴史」の概略を知ったら、自ずと「何故オルゴールを鳴らしていたのか?」がわかってきた(なぜ、どの地域で、「お猿のかごや」と「赤とんぼ」なのかは未だ不明だが)。
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「あの頃は各戸回収といって、各家の前に置かれていたゴミ箱を一つ一つ回りながら、ゴミを収集していたんです」
(中略)
ゴミ箱は雑芥用で、厨芥(生ゴミ)はまた別の方法で収集された。
「チリンチリンという鈴の音をさせながら収集車が回り、それが聞こえると、めいめいの家から生ゴミの入ったバケツを持ち寄って投げ込んだんです。(以下略)
考えてみれば大したことではない。豆腐屋のラッパや「なっと〜う」「きんぎょ〜え、きんぎょ〜」といった物売りの声と同様に、ゴミ収集は鈴を鳴らしていた。今だって、ちり紙交換などの公共サービスでない廃品回収車はスピーカーでその到来を知らせている。それと同様なのだろう。
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最終的に東京都が提案した新方式は、家庭内で容器にまとめたごみを回収時だけ屋外に出し、回収後は速やかに屋内に片付ける、というものだった。
そのために生まれたのがポリペール、という話。『サザエさんを探して』からの引用部分とあわせて考えると、これは雑芥のほうのゴミ収集方式の変化のようだ。ゴミ収集の風景を写した写真のキャプションにはこうある。
ポリペールに入れた家庭ごみを持ち寄る主婦たち。ごみ収集車がやって来ると近所の主婦が集まるこの光景は、新回収システムを象徴する「新風景」でもあった。
おそらくこの収集車は、鈴を鳴らす厨芥収集車と区別がつくようにオルゴールを鳴らしていたのだろう。
……などと納得しつつ、しかし微妙な異様さを感じた。この時代は「ゴミ収集車が来る時間まで、ゴミステーションには基本的にゴミは無かった」ということになる。後年、ポリバケツに取って代わったゴミ袋が「朝からゴミステーションに積まれている」、という風景にすっかりなじんでいるため、異様に感じられるのだ。ゴミの捨て方が変わった背景にはおそらく、専業主婦の減少と核家族化の進行により「ゴミ収集車が来る時間に人がいない世帯が増えた」という事情があるものと思われる。
さて、ゴミが積まれていれば、そりゃまあカラスは集まるし、十分な食事があれば増えもするだろう。となると、都市部でカラスが増えた原因のひとつは、専業主婦の減少だともいえるかもしれない。だから何だといわれても困るが。