「ウェブ進化論」評#1

承前。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

時代の潮流はWeb2.0なのだという。それは、

「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者として認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」がその本質だと私は考えている。(p120)

とのこと。認識の大部分は、私がかつて提唱した(大げさな)「一億総小賢化」によく似たものながら、小賢化(こざかしか)と冷笑的に構える私に対して、梅田望夫はとにかくかかる現状を肯定的に捉え、輝かしい未来像を描き出していく。
その根底にあるものは、まず(広義)民主主義に対する、梅田の絶対の信頼だ。「ネット上の「不特定多数無限大」を信頼できるかどうか」は本書の重要な問題提議であり、信頼すべしというのが梅田の答である。「果たして信頼していいのか?」。この当然の疑問に答えるために、梅田は「「不特定多数無限大の参加は衆愚を招く」と根強く考える人たち」を反対者と想定して論を進める。
私は、論自体よりも前に、この対立項の取り方に引っかかりを感じるのだ。手前味噌ではあるが、私の「一億総小賢化時代」は決して衆愚を招くという考え方に基づく認識ではない(愚ではなく小賢だ)。このあたりから、「ウェブ進化論」の不味さを……そしてベストセラーになった秘訣を、切り開いて見ることができる。この本は、実に平明な二項対立で世界を描いているのである。(つづく)