甚だ今さらだが、『解放少女 -SIN-』に遠藤正二朗が脚本で参加していたと知って驚く。
http://otabanushi.blogspot.jp/2014/01/sin.html
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あの色々とアタマが痛くなる設定がベースの物語に、一体どんな毒を忍ばせたんだろう?
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遠藤正二朗の代表作といえば、やはり『マリカ〜真実の世界〜』だ。
(ウィキペディア『マリカ〜真実の世界〜』)
パッと見のわかりやすい残酷描写、グロ描写が目を引くが、真髄は現代日本に対する社会批判にある。日本人を「黄色い豚ども」と呼ぶテロ組織の首領は「真実の人」と書いて、読みはトゥルーマン。トゥルーマンはトルーマンのもじりだろう。太平洋戦争当時のアメリカ大統領、すなわち広島・長崎原爆投下の最高責任者だ。ところが終盤で明かされるその正体は、なんとリストラされた日本人サラリーマン。しかも最終形態は「アルティメット・J(究極日本人)」と称する。
つまり、アメリカによる日本蔑視・日本侵略のカリカチュアと見せかけて、実は「日本人を激しく嫌悪しているのは日本人」という構造。しかもその「真実の人」は代替わりで受け継がれている、という……それがタイトルの「真実の世界」。20年前のゲームだが、現代のほうがより強く批評性を帯びてるな。
また、『マリカ』に並ぶ代表作、『ひみつ戦隊メタモルV』は要するに「小学生の女の子たちが変身して戦う戦隊もの」なのだが、変身能力を与える宇宙刑事には「厄介事を現地の子供に押し付ける無責任な大人」という含みがあるという。ダークな方向に突き詰めるとキュウべぇの先駆者になれたかもしれない設定だ。
遠藤正二朗の凄さは、ここらへんの要素はあくまでも隠し味に留めて、表向きただのパロディ(「アレっぽい話」)に仕上げること。それは同時に弱さでもある。これ見よがしで「ほらほら俺ってすごいこと考えてるでしょ!?」ってやるほうが中二センスの市場にはリーチするんだよね。
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さて、そこで『解放少女』だ。一作目のCMを見て、私は「カムイ」という言葉のあまりに軽い扱いに引っ掛かり、こんなことを書いていた。
TVCMで「空を駆ける解放機カムイ。少女は日本を救えるか?」って聞くたびにビミョーな気分になるんだが、終盤の展開はこうか?
『日本はついに大国から解放された。だがその日本からの……大和からの解放を求めて、アイヌたちが決起する! 再び空を駆ける、解放機カムイ。少女は日本を倒せるか?』
こうした日本批判の毒を忍ばせることができる世界設定で、若い女の子を最前線で戦わせるというゲーム展開。ある意味、実に遠藤正二朗向けといえるのだが、さて実際『解放少女 -SIN-』はどうだったのだろうか? どうもゲーム自体は散々な出来らしいのと、そもそも私はPS3を持っていないのでプレイしようがないのだが、気になるところである。