ドラえもん電車は広告ではない〜そもそも広告って何?

やめます、ドラえもん電車 小田急「広告と思わず…」 都の条例に抵触
2011.9.22 17:58
 小田急電鉄は22日、人気漫画「ドラえもん」などに登場するキャラクターを車体に描いた電車が、東京都屋外広告物条例に抵触していたと発表した。小田急は10月からこの電車を通常のデザインに戻す。

 小田急によると、原画などを展示する「川崎市藤子・F・不二雄ミュージアム」が9月3日、沿線にオープン。記念として車体に人気キャラクターを描き、扉のデザインをドラえもんの道具「どこでもドア」に見立てた電車を8月3日から各線で運行していた。

 東京都は8月、電車のデザインが同ミュージアムの広告に当たると小田急に連絡。「許可申請をせず、広告に当たる絵などの面積が基準を超え、条例に抵触する」と指摘した。小田急は都の指摘を認め、「広告に当たるとは考えていなかった。お客さまや関係者の皆さまにご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」とコメントした。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110922/trd11092218100019-n1.htm
MSN産経ニュース

この事件について、「申請しなかった小田急が悪い」という人が少なからずいてアタマが痛くなる。

そうじゃなくて問題は「そもそも申請が要るか否か」、「これは広告か否か」なのに。

小田急の担当者は控えめに「広告に当たるとは考えていなかった」と言っているが、これは本音ではきっぱり「これは広告ではありません」だろう。

「だいたい何の広告なんです? 藤子・F・不二雄ミュージアム? どこかに書いてますか、それ?登戸が最寄り駅と言われたって、その駅名も書いてませんし。絵が描いてあるだけですよ。何が広告なんですか?」

てな感じ。「ドラえもん電車」で画像を検索すればわかるが、元から車体に書いてあるodakyuの文字と形式番号以外には文字は全く書かれていない。

……文字情報が一切無く、デザインされたロゴさえなく、掲出している図像は商品そのものでもないのだから、これは広告に当たらない。……小田急はそう考えていた。なぜ広告にしなかったのか、その意図は不明だが(まさか「都に対する申請が億劫だったから」ではあるまい)、ともかくも「広告に当たるとは思っていなかった」のだ。

ところが都は「これは広告だ」と言い出した。

出版社などとは違って、東京都とケンカをしたら何の商売もできなくなるから、当事者の小田急は言われるまま引っ込んだけれど、傍観者の立場から指摘しなければならない。

これは為政者による恣意的な条例の適用だ、と。

まさしくあの、非実在少年条例(正式名称忘れちゃった)をめぐる騒動の核心ではないか。なのに何故だか、あれに反対する側だった人の反応がどうにも鈍い(まぁ、例の条例が通って飽きちゃったんだろうが)。

「文字が書いてないっていったって、これはどう見ても広告だろ」と言う人に聞きたい。

「ならば車両を赤と白のストライプに塗り変えたら広告ですか?」

沿線住民なら大概の人が、赤と白のストライプの車体を見れば小田急バスを連想する。「ドラえもんをはじめとする藤子キャラを見れば、多くの人がミュージアムを連想するのだから広告だ」というなら、同じ理屈で赤白ストライプも小田急バスの広告なのだが、何と答えるのだろう。

「何をいってるんだ、赤白ストライプが広告のわけないだろう」と思ったなら、その時点で「恣意的な適用」を認めているようなものである。「もちろんそれも広告だ」と答えられても困るが、それでは鉄道会社はコーポレートカラーを統一するのも戦々恐々となってしまう。

さて、広告とは何だ? 何と定義する? それとも定義はしない? 何にでも網を掛けられるように。

面白い事件、と言ったら語弊があるが、色々と深く考える余地があるのに、やれ都は無粋だ、それ小田急はマヌケだというレベルで巷間の話題が止まっているのが残念でならない。