萌え・エロと少女漫画を分かつもの

日経ビジネスオンライン、「伊藤乾の源流探訪」シリーズの「「萌え」は未来を予言する!」という記事。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100524/214561/
記事本体はどうというものでないが、ひとつ気になった写真がある。ドイツの書店の店先で撮影された、日本のマンガ絵が表紙の『DAISUKI』という雑誌の写真だ。キャプションに「萌え系雑誌はビニール袋に入っている」とあるが、しかしそれは一見して少女漫画の絵なのである。VAMP……KNIGHTと読めるので、そういうタイトルの漫画があったなとググってみると、ああこれだ、「ヴァンパイア騎士」。

「海外においては『LaLa』の漫画も一様に萌え系として受容されている」のか、それとも「深夜アニメ原作という切り口で言えば『ヴァンパイア騎士』も萌え系と同類である」のか? はたまた『DAISUKI』も実は少女漫画誌であり「書き手は萌え系と少女漫画の見分けがついてなかった」だけなのか。

……って、念のため「DAISUKI」「ドイツ」でググッたら、「ドイツ語版花とゆめ」って一発で答えが出るじゃん。ドイツの問題でなく、単なる書き手のリサーチ不足かよ。そんなんで「未来を予言する!」とか大上段で言われてはたまらんな。

まぁいいや。そんなことより問題は、むしろ「どうして私は一見して萌え系ではないとわかったのか」という点。「少女漫画として見覚えがある」とは別のレベルで、どうしてか見分けがついてしまった。

一方、この4月からずーっと頭の片隅にひっかかっているのが「ジュエルペットてぃんくる」の謎。内容でいえば直球の女児向けアニメなのに、どこか萌え系というかオタ向けというか、ぶっちゃけエロゲの匂いがするのだ。それは、例えば前作「ジュエルペット」や前番組「しゅごキャラ!」、女児向けアニメの定番「プリキュア」について、萌えを感じる視聴者が少なからずいるということや、それらの作品のエロ二次創作が存在するということとは、また次元を異にする。

「ヒロイン3人のキャラクター設定が、同世代かそれ以下の女児が自己を投影できる、もしくは憧れを抱く人物造形でなく、男(というかオタク層)にとって好ましい形になっているからだ」という仮説はある。ただそれは、アニメ本編を観てこそ成り立つ仮説であり、まずオープニングを一見して「なにこのエロゲ臭」と感じたことの説明にはならない。

萌え・エロと少女漫画・女児アニメは画風を同系統としながら、どこかに何か微妙な差異があって、しかしその違いを越えてしまった作品もある。微妙な差異とは、さていったいどこなのだろう。