怪奇大作戦

♪るるるーるるるー……ってそこそこ、『怪奇大家族』じゃないっての。タイトルの元ネタであるところの『怪奇大作戦』の漫画版だ。

1968年〜69年に『週刊少年キング』に連載された「怪奇大作戦」のコミカライズ版。1話30分の原作を3回(「人喰い蛾」は4回)かけてやるために、原作と見比べると漫画版独自の要素が多い。影丸穣也による前半は「人喰い蛾」「恐怖の電話」「光る通り魔」「死を呼ぶ電波」の4話、中城けんたろうによる後半は「氷の死刑台」「幻の死神」「かまいたち」「果てしなき暴走」の4話。
「人喰い蛾」 第1話ということで、直感重視の行動派・三沢と変人研究者・牧との捜査方法の対立など、SRI所員の人物紹介も兼ねた描写が多い。事件の背景にあるものが、自動車メーカーの開発競争がもたらした産業スパイ戦というあたりがいかにも60年代だ。結局、事件の黒幕(巨大な外国資本)には捜査の手は及ばずに終わり、「悪いやつほどうまい汁をすう……か。くそっ!!」「現代の怪奇だよ…」という会話で締めるあたりはちょっと社会派。しかし、犯行の動機と凶器(蛾を使った殺人菌の散布)とがまるで無関係なので、総じてメッセージ性は弱い。まぁこれは「怪奇大作戦」には毎度のことなのだが(苦笑)。
「恐怖の電話」 漫画版なのではのアレンジがトンデモな方向に行ってしまった。TV第1話「壁抜け男」をやらなかった埋め合わせか、ブラック・サタンなる怪盗による予告犯罪という漫画版独自の開幕をみせる。でもこれ、捜査の撹乱を狙った犯人の偽装工作でしかないうえに、最後の最後までブラック・サタンは存在を忘れられている(苦笑)。いかにも水増し要素といった感じ。
「光る通り魔」 純粋に作品として評価すると単なるB級サスペンスホラーなのだが、TV版と比べると漫画アレンジの見事さが光る。最後、TV版の燐光人間は「惚れてた女が他の男と結婚するのがクヤチイ!」でおびき出されてしまう惨めなダメ男なのだが、漫画ではキャラ配置の変更によって「妹の危機を救うため」に現れるお兄さんとなっている。妹を守り復讐を果たしたものの、変わり果てた姿のまま死ぬこともできない……という幕切れもTV版以上に物悲しい。
「死を呼ぶ電波」は特に語ること無し。後半の中城けんたろう版と、ついでに購入した桑田次郎版(これもまた面白いんだ)についてはまた後日。