「オオカミの護符」

「川崎の我が家で目にした一枚の護符。描かれた「オイヌさま」の正体とは?」「護符への素朴な興味は、謎を解く旅となり、いつしかそれは関東甲信の山々へ―。」

オオカミの護符

オオカミの護符

オビには書かれていないが、同名のドキュメンタリー映画があり、その取材・撮影の記録というべき本だった。なので、謎を追っていくうちに旅は思いがけない遠方に至る……という読み物としての面白みがある半面、考察はあまり深くない。とはいえ、決して表面をなでるだけの記述ではなく、信仰の背景はがっちりと把握。「御嶽講」の様子や、今なお行われている「太占(ふとまに・教科書に載ってるアレです)」をきちんと取材しており中々の読み応え。ヤマイヌ・オオカミへの畏敬もよく掘り下げています。単に地理的な遠方へ行くだけでなく、時間を遡行して山岳信仰のルーツへ向かっていく旅でもあるから、正しい意味で「スピリチャル」と言えましょう。