北朝鮮が打ち上げたもの

北朝鮮は何を打ち上げようとしたか?
日本国政府の公式の用語は、

北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射事案
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/northkorea.html

意味は伝わるけれど、どうも気持ち悪い。
大手マスコミの大半も「人工衛星」と称するミサイル」など、政府に準じた表現をしている。
長く言ってもなお、

人工衛星と称する事実上の長距離弾道ミサイル発射実験
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83B01B20120412

とかいう。
違うだろ。
人工衛星はロケットに積むもので、ミサイルは弾頭を積んだロケットだ。
ミサイルを人工衛星と称することはできない。
正しくは、

人工衛星打ち上げと称する事実上の長距離弾道ミサイル発射実験

でしょ。これなら「打ち上げと称する発射実験」で、意味が通る。
実際、毎日新聞は、

人工衛星打ち上げ」名目で事実上の長距離弾道ミサイルを〜発射
http://mainichi.jp/select/news/20120413k0000e030207000c.html

としている。いささか冗長だが、これなら正しいといえるだろう。
CNN経由の聨合ニュースは一報では、

衛星を搭載していると称する長距離ミサイル
http://www.cnn.co.jp/world/30006233.html?google_editors_picks=true

としていて、これが簡潔かつ間違いの無い表現ではないだろうか。
こうした中、他のすべてが霞むようなトンデモな表現を見つけてしまった。

気象衛星を積んだ弾道ロケット
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83B07920120412

恐ろしいことにロイターは、これで統一しているらしい。
弾道ってのは最後は地上に落ちてくるものなんだから、人工衛星を軌道に乗せるためのロケットが弾道ロケットではダメだろう。
「これって結局は弾道ミサイルだよね?「気象衛星を積んだ弾道ミサイル」でいいかな?」「いや、弾頭を積んでないからミサイルじゃないな」「じゃあロケットか。弾道ロケットね」……こんなプロセスがあったものと想像できるけど。
なお、先に上げたCNNの記事も今は「衛星を搭載していると称する長距離ロケット」に改めている。こちらもおそらく、弾頭を積んでいないからミサイルでなくロケットだ、と修正したのだろうが、「長距離ロケット」って何だ「長距離ロケット」って。
本末転倒とはまさにこれ。そこを直すなら「気象衛星を積んだロケット」「衛星を搭載していると称するロケット」にすべきなのだ。でも、それじゃあ何の問題もない、ただのロケット打ち上げでしょ? 軍事転用を前提としていることが問題の核心なんだから、それ自体に弾頭があろうとなかろうと「ミサイル」でいいんだよ。