巨艦は店舗か企業か

「巨艦主義」の話題の続き(2012年3月9日)。
当の日経ビジネスオンラインではどうなんだろう? とサイト内検索で「巨艦」を探してみた。
最古は2003年12月15日の記事だが、そこから間が空いて2007年に3件の記事がヒット。2008年には5件、そして2009年の7件がピークで、2010年は3件となり、2011年は1件にとどまっている。
ところが記事を開いてみると、「巨大企業」の意味以外に、「巨大店舗」や文字どおりの「巨艦」を指すケースが入り交じっている。
2003年/「艦船」×1
2007年/「企業」×2「店舗」×1
2008年/「企業」×1「店舗」×2「艦船」×1
2009年/「企業」×4「店舗」×3
2010年/「企業」×2「店舗」×1
2011年/「企業」×1
ざっと整理するとこのとおり。日経ビジネスオンラインという狭い範囲に限っても、ビジネス用語としての「巨艦」は巨大企業だったり巨大店舗だったりするのだから、そこで「巨艦主義」と言ったとて意味がすんなり他人に伝わるのかと疑問に思う。
ともあれ、巨大企業の意味での巨艦が登場するのは2007年で、ピークは2009年となっている。何のどういう影響で使われ出したかが気になるところだ。
 
以下に検索で引っかかった記事をまとめている。

田村賢司の順張り逆張り 2003年12月15日
「デフレ輸出国」から「インフレ輸出国」に?! 中国を基点に世界が変わる

「超ど級」という言葉は、1906年に建造された英国の巨大戦艦、ドレッドノートの名に由来するそうだ。

従来艦を大幅に上回る砲数、速力を持ち、防御力も他を圧倒したという巨艦だけに、それを超えるものはめったにない。だからこそ、超ドレッド級となると大変なこととなる。超ど級とは、そういう意味なのである。

そういう意味じゃねぇよ。「大変なこととなる」なんて幼稚な驚嘆ではなく、現にドレッドノートを超えた艦が出来たから超ド級と言ったの。ていうか、かつて日本が建造した超弩級戦艦を知らんのか? 「超ド級」が広く人口に膾炙してるのはドレッドノートによるのではなく、伊勢や長門、そして大和によるはずだ(関連記事:2007年11月08日付「どド弩」)。
おっと、いきなり脱線したが、この記事の「巨艦」は喩えではなく艦船のことだった。

NB100 2007年6月18日
味の素 M&Aに動く巨艦、早期のシナジー創出がカギ

巨大企業の意味で「巨艦」が登場するのはこれが初。

BusinessWeek 2007年10月4日
クラフトは輝きを取り戻すか

巨大企業の意味で「巨艦」。この記事については後日改めて。

NB100 2007年11月14日
ファーストリテイリング ロンドン出店の奥にある課題

11月7日、ロンドンの商業集積地オックスフォード通りに、カジュアル衣料販売店ユニクロ」の新店が開業した。地上2階、地下1階、売り場面積は2300平方メートルと、国内の旗艦店である東京・銀座店のおよそ1.5倍の規模の巨艦店だ。

ここでは店舗を「巨艦」と言っている。「旗艦店」に対して「巨艦店」? なお、シリーズは「NB100」だが、味の素の回とは執筆者が異なる。

金ぴか偉人伝 2008年7月22日
血なまぐさい台湾に「商機」あり−−直吉、運命の出会いへ船出

喩えではなく軍艦について「巨艦」。

伊東 乾の「常識の源流探訪」 2008年8月12日
「徐燃化」と海軍技術将校の記録

検索でヒットするが本文に「巨艦」無し。旗艦が出てくるので、内部的なタグの打ち間違いと思われる。

ニュースを斬る 2008年9月16日
イオンやダイエーを蹴散らす地場スーパー

企業ではなく「巨艦店」。

ニュースを斬る 2008年10月10日
「シャネル2割減」と高島屋と阪急阪神

これも企業ではなく「巨艦店」。

ニュースを斬る 2008年12月24日
赤字転落のトヨタ、「大政奉還」は復活の切り札か

ここ10年の間、我が世の春を謳歌してきた巨艦トヨタは生まれ変われるのか。

久しぶり、2007年10月4日以来となる、巨大企業の意味での「巨艦」。

日経ビジネスが描いた日本経済の40年 2009年2月6日
中国は大丈夫か[44]行列ができる高級弁当〜五輪後の中国経済(2)

総面積は13万m2。市内から約20km、車で45分ほど走ったところに、その巨艦店はそびえ立つ。すぐ近くには新しい駅があり、高層マンションが次々と建てられている。

この商業施設の特徴は、店舗面積の大きさもさることながら、駐車場の広さにある。8000台が駐車できる。北京にある商業施設は、巨艦店と呼ばれるところでも多くて2000台程度だった。

「巨艦店と呼ばれるところでも」ということは、小売業の用語として「巨艦店」がある?

日経ビジネスが描いた日本経済の40年 2009年2月27日
【時代のリーダー】 飯田 庸太郎・三菱重工業会長

巨大企業の意味で「巨艦」。

時事深層 2009年3月2日
高島屋が狙うオセロ作戦

「巨艦店」。

ニュースを斬る 2009年6月23日
“地味”な新型iPhoneが示したアップルのすごさ

「巨艦店」。

日経ビジネスが描いた日本経済の40年 2009年8月17日
【時代のリーダー】川村 隆・日立製作所会長兼社長

巨大企業の意味で「巨艦」。「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」シリーズだが、三菱重工のときとは執筆者が異なる。

時事深層 2009年11月17日
【株価が語る】 トヨタ自動車 市場が催促する「将来像」

巨大企業の意味で「巨艦」。

逆風の企業戦略 2009年11月20日
赤字ドワンゴの行方 夏野氏が語る「ニコ動」黒字化計画

「巨艦グーグル率いる「YouTube(ユーチューブ)」」と書かれており、巨大企業の意味。

「買わない」私が、気になる売り場 2010年2月5日
カオスな「ニュー新橋ビル」とエコな「イオンレイクタウン

「巨艦店」。
記事の最後に「記事掲載当初、5ページ本文中で「家電巨漢店」としていましたが、正しくは「家電巨艦店」です。お詫びして訂正します。」とある。ならば「巨艦店」なら正しいということで、やはり小売業界用語として存在する?

小屋知幸のビジネストレンド研究所 2010年9月14日
銀座百貨店戦争−三越は銀座を制するのか、銀座で散るのか

“巨艦”化競争を繰り広げてきた百貨店業界では、基幹店クラスの売場面積は概ね5万平方メートル以上が標準となっている。

「巨艦店」とは書かれていないが、店舗規模について「巨艦」と言っている。

未来都市宣言 スマートシティ事業参入のススメ 2010年9月27日
日立が街を丸ごと造る日

巨大企業の意味で「巨艦」。

時事深層 2011年3月8日
イオン、拡大路線復活の成算

巨大企業の意味で「巨艦」。

改めて問う経営再創造の道筋 2012年3月7日
「巨艦主義」と決別し、個性的な企業のさらなる集積を

巨大企業の意味で「巨艦」。