「最後の有人戦闘機」の謎があっさり解決

以前にも取り上げた(2010年1月14日付)、ロッキードF-104戦闘機はアメリカでも「最後の有人戦闘機」と呼ばれていたか? という話。

ちなみに最後の有人戦闘機の呼び名はultimate manned fighterを訳したものだと言われているが、正しい和訳は究極の有人戦闘機である。日本ではかなり有名な表現だが、英語圏ではこのような表現はほとんどされていないらしく、少なくとも、英語版wikipediaのF-104にはそのような表現はない。
これはロッキード社の副社長が来日したおりの記者会見で「これ以上のものは有人では無理である」との発言を捉えたものだと云われる。誰しもにそう思わせるようなラジカルな姿態の戦闘機だった。
「最初の無人戦闘機F-99ボマークと対をなして呼ばれた」との説もある。また、当時製作された記録映画には『F-104J 人間が乗る最後の戦闘機』というタイトルがつけられている。
 
F-104 (戦闘機) 出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/F-104_(戦闘機)

と、ウィキペディアにあるのですが、それに対する私の疑問。

ところがですね、そもそもの話、「ultimateの意訳で「最後の」になったというのは本当か?」という疑問があるんです。

上で引用したウィキペディアの記述にもあるとおり、「英語圏ではこのような表現はほとんどされていない」らしい。試しに「ultimate manned fighter f-104」で検索しても、日本のサイトか全く無関係なサイトしか引っかかってきません。『F-104J 人間が乗る最後の戦闘機』という記録映画は、F-104「J」ということはこれも日本製の映画でしょう。となるとこれについても、"F-104J ultimate manned fighter"という原題があったとは考えにくい。

ultimate説がいつ頃どこからきたのか判然としませんが、実は素直に「last manned fighter」の意味として、日本で言われ出した言い回しじゃないかと思っています。

はい、これは半分アタリでした。「「最後の有人戦闘機」は"ultimate manned fighter"の意訳ではない」のはアタリ、ただし「日本で言われ出した言い回しではない」でした。
書泉グランデに行く用があったので、ついでに世界の傑作機を買ってきました。

世界の傑作機 (No.103) 「F-104 スターファイター」

世界の傑作機 (No.103) 「F-104 スターファイター」

最初の記事のタイトルが「『最後の有人戦闘機』の開発と各型」、その見出しに添えられた英語は……。
"Missile With A Man In It"
本文には以下のようにあります。

1号機が初飛行する前日の2月16日、バーバンク工場で完成したばかりの2号機(s/n 55-2956)のロールアウト・セレモニーが報道陣を集めて開催されたが、「最後の有人戦闘機(Missile with a man in it)」のキャッチフレーズとともに初めて公開されたYF-104Aのエアインテークは金属製のカバーで覆われていた。

つまり、「1人乗りミサイル」を意訳して「最後の有人戦闘機」になったのでした。
そこから先に踏み込むと、「アメリカでは"ultimate manned fighter"とは言わなかった」という調査、「無かった証拠」を探すという面倒な話になるので私には手に負えないのですが、まぁ普通に考えてキャッチフレーズは2つも無いでしょう。しかもどちらも日本語訳は同じ「最後の有人戦闘機」だなんて。
やはり「最後の有人戦闘機」が逆に英語に訳されて、"ultimate manned fighter"と言われるようになったのではないでしょうか。素直に"last"にしなかったのはどういうセンスなのかと興味が持たれます。

(つづき。http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20150718