子持ちの未亡人はシングルマザーか

2月から『東京マグニチュード8.0』がANIMAXで放映開始。その番宣で主要な登場人物のひとり、真理を「シングルマザー」と言っていることに違和感を覚える。
真理は確かに女手ひとつで娘を育てているが、夫と死別した若き未亡人だ。対してシングルマザーは、「未婚の母」の言い換え語だったはず。時を経て意味が広がった可能性もあるが、果たして適当な言葉なのだろうか。
wikipedia「一人親家庭」によると

一人親家庭(ひとりおやかてい)とは、母親または父親の片方いずれかと、その子(児童)とからなる家庭をいう。単親世帯ともいう。
母と児童の家庭を母子世帯(ぼしせたい)あるいは母子家庭、父と児童の家庭を父子世帯(ふしせたい)あるいは父子家庭といい、かつてはこれらをまとめて行政用語では欠損家庭と言っていた。ひとり親家庭、単親家庭(たんしんかてい)とも言う。
また、そのような教育および家庭環境を持つ親を、母(女性)の場合はシングルマザー、父(男性)の場合はシングルファーザーと称される。

と書かれており、これだけ読むと事の経緯を問わず、父親のいない家庭の母親をシングルマザーと呼ぶかのようだ。しかしこれに続いて、

なお、シングルマザーという呼称は、池上千寿子の著書「シングル・マザー 結婚を選ばなかった女たちの生と性 」(1982年)によって広まった。

とも書かれている。

シングル・マザー―結婚を選ばなかった女たちの生と性

シングル・マザー―結婚を選ばなかった女たちの生と性

広まったのがこれによるのであれば、やはりシングルマザーとは本来「結婚を選ばなかった女」を指すといっていいだろう。
実際、2009年の『月刊チャージャー』3月号の記事にも、そちらの意味でシングルマザーをフィーチャーしたものがあるし(【調査】まずは疑って係!/ブログが大人気! モモエリさんに聞いてみました シングルマザーに憧れる女子が急増中?)、ウェブ上に見る限りでは、やはり未婚で(ないし離婚によって)女手ひとつで子供を育てることを選んだ女性を指すことのほうが多い。
となると、ANIMAXの『東京マグニチュード8.0』の番宣にいう「シングルマザー」は、「間違いではないが適当ではない」くらいだろう(ついでにいうと、真理は義理の母と同居していて子供の面倒もみてもらっていたから、その点でも狭義シングルマザーのイメージからは遠い)。
この「誤用」からひとつ推測されるのは、「(狭義)シングルマザーの社会的地位(社会的認知度)は向上した一方、相対的に未亡人のそれは低下した」ということだ。「自ら選んで夫を持たないことにした女性」と「意に反して夫を失った女性」とは本来全く性質を異にするはずだが、同列に扱われているのである。それがいいか悪いかはさておき(面倒くさい話題からは逃げる)少しばかり興味深く思う。