/ガンダム建築のマッピング

昨日のエントリとか、その前とかからの続き。ここで一度、流れを整理します。1992年1月の『AERA』誌で、中崎隆司はM2ビルを「ポスト・ガンダム」と評している。となると当然、ガンダム建築は80年代後半に建てられた、ということになる。つまり、自動車の「ガンダム」と建築の「ガンダム」は同時代に発生した、ということです。
そして「ガンダム建築」とは、中崎隆司の見が正しいとすれば、ポストモダン建築のうちの「恣意的に、過剰になった」ものを指す。
だから、藤田一己の「Zガンダムのデザインワークをしていた頃はデザインのインダストリアル的な商品価値を考えていた」発言がハッタリでないならば、彼はつまり「その頃の(ポストモダン)デザインの潮流を意識してZガンダムをデザインした」と受け止められる。
む、まだ整理できてないな。
要するに、
・後に「ガンダム」と命名される建築物が建つのと並行してZガンダムのデザイン作業は進んでいた。
・「ガンダム」は必ずしも、「機動戦士ガンダム」やその他ロボットアニメに直接的に影響されたデザインではない。ポストモダン建築の派生種、あるいは行き着いた果てである。
Zガンダムガンダムの正統後継者だが、カギカッコ付のガンダム」を取り入れてもいる。
・さらに同時並行して、自動車デザインの世界でも、恣意的・過剰なポストモダン調の「ガンダム」デザインが発生した。
と理解される。
RZ-1もZガンダムも、同時代のデザインの潮流の一側面として捉えるべきものであり、「サニークーペに乗るのはガキである。だから、ガンダム的なクルマを」云々と打ち捨てて済むような話ではないのですよ。

となると、「藤田一己Zガンダムに取り入れたデザインの潮流≒『ガンダム』エッセンスとは何か。それはどこから生まれたか」という疑問に至るわけですが、ここはもう、まずは藤田がご存命のうちに本人にうかがうべきことでしょう。

さて、90年代からは、Zガンダムガンダムのうちと認識され、アニメやプラモでは次から次へと新しいガンダムが生まれ、そして建築の世界でも自動車でも「ガンダム」デザインは続いていった。

時代流れて「Casa BRUTUS」誌2005年8月号では、ガンダムとアートの関係をめぐっての小特集が組まれています。その中で、ガンダム建築にも1ページが割かれていました(Casa BRUTUSは一応建築雑誌です)。

五十嵐太郎さんと、ガンダム建築について考えてみました。
ガンダム建築。結構この言葉、耳にします。でも、どんな建築かはなんとなく想像がつくものの、よく分からない。で、五十嵐太郎さんに聞いてみたところ……。(注・五十嵐太郎は建築評論家)
 
「それこそ定義みたいなものが、あるわけじゃないですからね。要するに、メカテイストの建築の代名詞としてガンダムの名が使われてるんだと思いますよ」
やや身も蓋もない。例えば、ガンダムをリアルタイムで体験した世代の建築をガンダム建築と呼んでみるとか……。
「直結はしないでしょ。ガンダム好きの建築家はいますが、公の場ではあまり表明しないですね」
なるほど……。でもせっかくですし、ここで「ガンダム建築」の可能性を考えてもらえませんか?
「そうですねぇ。まず従来どおりの"メカ系"が一つ。それと、ガンダムモビルスーツってSF小説のパワードスーツから来てるんですが、これを身体拡張としての建築と解釈して、"パワードスーツ・身体性ゾーン"を設定。さらにガンダムの描く未来宇宙像というラインに注目して、"宇宙・エコゾーン"を設定しましょう。これに代表的な建築を当てはめて……」
かくして史上初、ガンダム建築のマッピングが完成!
(記事はこの本文のほか、設定した3つのゾーンのどこに有名建築が当てはまるかを示したマッピングを掲載)

「Casa BRUTUS」という、建築雑誌では傍流も傍流のとこで「史上初、ガンダム建築のマッピング」をやってしまうことに「いずこも同じ」感がありますし、五十嵐太郎をしてもなお定義を示せず、半ば即興でマッピングを行う程度なんですねえ。
まー、それでも自動車評論の不毛さに比べたら、はるかに豊かといっていいでしょう。それに五十嵐太郎ならば、その気になればガンダム建築をテーマに新書本の一冊くらいは書けるのではないでしょうか。
(つづく)