日本ドリル精神史

「日本SF精神史」(asin:4309624073)から小ネタをひとつ。押川春浪の『海底軍艦』(1900年)について、以下のような解説がある。

この海底軍艦電光艇は未来的な流線型のフォルムを有し、鉄艦の装甲をも破壊するドリル(敵艦衝破器)や新式並列旋廻水雷発射機などの新兵器を備えているほか、特殊な薬品を燃料とする新発明の動力装置で動くという秘密兵器だった。
(P110)

んー、敵艦衝破器ってホントにドリル? ひょっとして、衝角=ラムがちょっと立派になった程度のものじゃないか? もちろん、轟天号(映画のほうの「海底軍艦」)には立派なドリルが付いてるわけだけど、押川春浪の小説にも「円錐形で旋回する攻撃兵器」とかいった描写があるのだろうか。
そこで『B-CLUB』108号(94年11月号)を引っ張り出して、「大研究 ドリルキャラクター」を開いてみると…。

敵戦艦の装甲をたやすく貫通する旋回式の衝角器をそなえ、1分間に78発の魚雷を連射可能な発射管をそなえた電光艇は、その当時の夢のテクノロジーをスーパーマシンだったのだ。

と書かれていた。原本での描写はこのとおりではないだろうが、旋回式なのは間違いなさそうだ。この電光艇がやはり、武器としてドリルを装備したSFメカの最初の例なのだろうか。その後、いかにしてドリルメカは日本のSF精神に根付いていったのか、ちょっと興味が持たれるところ。