広島県立美術館「ル・コルビュジェ 光の遺産」はひどかった

8月2日、期待以上だった「まぼろしスーパーカー」展の後は、アストラム(いわゆる新交通システム)で広島市街中心部へと向かった。次なる目的地は広島県立美術館の特別展、「ル・コルビュジェ 光の遺産」だ。

だがこちらはとんだ期待外れ、というかはっきり言って酷いものだった。写真パネル以外にビデオ上映や模型等もそろえていて、展示品の数でいうと相当なボリュームなのだが、解説がまるで要領を得ておらず、見ているうちにイライラしてくるほど。

例えばユニテ・ダビタシオンという建物。解説によれば、「ブリーズ・ソレイユ」によって、真夏の強い直射日光を防ぎ、冬の陽射しを上手く取り入れることに成功している、という。

で、その「ブリーズ・ソレイユ」って何?

それがわからない。肝心のその説明がどこにも無い。せっかくの模型もどちらが南なのか示されていないから、どれのことやら見当の付けようが無い。

それでも模型を見てみると、どうやら壁面から深く掘り下げた位置に窓があるようだ。これがブリーズ・ソレイユならば、確かに夏の高い陽差しを防ぎ、冬の低い日差しは導入できるなと思う。しかしこの構造は建物の両面ともに見られるのが引っかかる。ブリーズ・ソレイユは南面にのみあるべきものだから、やはり別の何かかも……と、結局ははっきりしない。

例えば救世軍本部ビル。長々とした解説のなかに「当初はカーテンウォールだった」とひと言だけ書いていて、竣工当時の写真や図面は一切無し。

他の解説にも「カーテンウォール」の語はしばしば出てきて、いかにも重要そうな要素なのに、何を意図して採用したのか? どうして止めてしまったのか? つーかそもそもどんなものなのか? これまた一切わからない(まぁ、こちらはどんなものかさすがに想像がつくが、だからといって解説せずに済ませていい要素ではないだろう)。

一事が万事この調子。ズラズラっと解説文を書き連ねて解説したつもりになっていて、肝心のことはまるで何も伝えていないのだ。

イライラしながらその企画展を後にして、コレクション展のブースに足を踏み入れたとき、「ああ、そういうことか」と気が付いた。

ここは博物館ではなく美術館なのだ、と。

ふだんファインアートなんぞにかまけている連中には理詰めで何かを説明することなど出来ないのだ。もとい、ふだんファインアートをメインに扱っている方々は、直感的に伝わることを重視している、だからくだくだしい説明など避けるのだ。

わかった。私が悪かった。美術館に理知を期待した私が愚かだったのだ。じゃなくて、美術的なセンスを解せない私が悪いのだ。

というわけで私には、「お芸術」「アート様」と呼ぶべきものに対する偏見がより一層増した場所であった。何はともあれ学芸員は、一度INAXギャラリーに行って勉強してくるべきだと思う。せめてINAXブックレットはひととおり読んで、「展示から切り離された読み物としても読み応えがある図録」とはどういうものか、そちらだけでも理解して欲しいものだ。