謎のダッシュボード

ダストシュートにちなんで、「名たんていカゲマン」(asin:4091470416rakuten:book:11311379)からの話題をもうひとつ。「名画どろぼう」の回に、「盗難にあった絵はダストシュートに投げ込まれ、隠されていた」というトリック(と呼べるほどではない)があるのだが……。

小学館てんとう虫コミックスライブラリー 名たんていカゲマン1』p219)
何故かダストシュートのことを、ダッシュボードと書いている。これは昔のてんとう虫コミックス版からの誤記で、個人的には子供の頃から引っかかっていたのだが、2004年刊のてんとう虫コミックスライブラリー版でも修正されなかった。「あんまさん」のくだりの改悪などより前に、まずこういう明らかな間違いからなんとかしろって(苦笑)。しかしまぁ、一体何がどうしてダストシュートがダッシュボードになってしまったのだろう。
それにしても、こうして堂々とダストシュートが出てくるあたりに、この作品が描かれた年代を感じてしまう。今どきの若い人は、いやひょっとすると20代の人でも「ダストシュート」と言われてもピンとこないのではないか?(暗之云は18歳だけど)。
ざっくり調べた感じでは、大正時代末から昭和初期に、東京では同潤会アパート、大阪では軍艦アパートに採用されたのが日本におけるダストシュートの始まりで、1970年代半ばから終わり頃にかけて次第に使われなくなったらしい(先に引用した記事からすると、管路ごみ収集システムのダストシュートは90年代にも作られていたようだが)。
ただし、その、使われなくなった理由が今ひとつ判然とせず、折をみては調べている。「高度成長によって、発生するゴミの量がダストシュートのキャパシティを超えた → 高温多湿な日本では、ゴミの増加やゴミ袋の破損が、すぐに悪臭や虫の発生といった問題に結びついた」との推測が今のところ私の中では有力(参照「ダストシュートの興亡」)。