杉並区の「カとハエの碑」そして中島飛行機発祥の地

古本で購入した『東京の新地図』という本。

新といっても1968年の本で、住居表示によって旧町名が過去のものとなりつつある時代に、東京23区の主要な街を当時の視点で改めて捉え直しています。50年近い昔の現在そして追憶を、現在の視点でたどることはたいそう面白い。

そうした面白味のひとつが「カとハエの碑」。かつて杉並区にあった中通町は昭和39年(1964年)に環境大臣名で「環境衛生日本一」の表彰を受けたものの(ここにまず時代を感じる)、住居表示により中通町の町名は消滅。今川1〜3丁目・桃井1〜3丁目となることに。しかし……。

ここに環境衛生日本一の町ありき、と後世に残すため「カとハエの碑」を建設することを、満場一致で決めた。いま、その建設場所をどこにしようか、と相談し合っている。
(「東京の新地図」p102)

いやその、気持ちは分かるが「カとハエの碑」って正気かそれ。
そんなこんな気にしていたものの、どこに訊いたものかわからず「杉並の歴史、著名人、グルメまで季節の話題など多角的情報をほぼ毎週更新」しているというサイト(すぎなみ学倶楽部)にメールを送信。
http://www.suginamigaku.org/
おそらくは場違いであろう私の質問に丁寧に対応してくださって、なんと杉並保健所に確認のうえ「区としてはその情報はない」という回答を送ってくださいました。いやホント、申し訳ない&あり難いです。

そういうわけで、結局は建たなかった(仮に建ったとしても現存しない)という結論に達した「カとハエの碑」ですが、本日ちょっと杉並まで出かける用があったので、旧中通町域まで足を伸ばしてみました。

「あるとしたら中通町域のどこか」という以外に何の手がかりも無いものの、・狭い領域とはいえ「公」のものだから私宅には無いだろう ・ともあれ記念碑なのだから路地端にコッソリということはないだろう ……という推測のもとにソレっぽい場所を見てまわる。

しかし、やはりという見つからない。その代わり、でもないが行き着いたのがこの公園。

今は「桃井原っぱ公園」、だが歴史をたどれば中島飛行機の原動機工場からプリンス自動車などを経て日産自動車荻窪工場となり、それも平成10年に閉鎖。その跡地なのだ。
もっとも現在は入り口の説明書きと、未確認だが「旧中島飛行機発動機発祥之地」の碑、「ロケット発祥之地」の碑以外に往時を偲ばせるものはない。

ここに行き着いてハッと気が付いた。ああそうだ、公園には旧町名を冠したものがあるのでは? そしてスマホで検索……ビンゴ、「中通公園」がある。
http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/kouen/04/momoi/1007361.html
「カとハエの碑」か、あるいは別の名前の「環境衛生日本一の記念碑」があるとしたら、この公園の可能性が高いと向かうことにする。道すがら、町内会の掲示板を見てみると……。

おお、さりげなく旧町名「中通明和会」だ。
期待を膨らませて歩き続け、ついに中通公園に到着したものの……。

やはりというかナンというか「カとハエの碑」は見当たらず。
というわけで結果だけで言えば「どうやら無いらしいと推察されたモノを見に行って、やっぱり無いらしいで終わった」だけなんですが、それはそれで有意義な散策でした。