太陽の塔に対峙せよ!

岡本太郎記念館で企画展「太陽の塔に対峙せよ!」を観た。
http://www.taro-okamoto.or.jp/

開催概要
 この世界一の大屋根を生かしてやろう。そう思いながら、壮大な水平線構想の模型を見ていると、どうしてもこいつをボカン!と打ち破りたい衝動がむらむら湧きおこる。優雅におさまっている大屋根の平面に、ベラボーなものを対決させる。

 太陽の塔は、展示物として美術館を渡り歩く"フツーの彫刻"ではありません。
 高さ70mの圧倒的存在感、内部に擁する濃密な展示空間、建築と同様の建立プロセスなど、あらゆる点で彫刻の常識から外れていますが、いちばんの違いは"相手がいた"ことでしょう。
 先にリングに上がっていたのは《大屋根》でした。
 岡本太郎がテーマ館の構想を練りはじめたとき、すでに大屋根が万博の主役としてラインナップされていました。空中都市のひな形である大屋根は、万博の思想を体現するモダニズムの極致。太郎はこれを打ち破る「対極」を投げ入れることで、万博を覆う楽観的な未来主義に風穴を開けようとします。
 それから半世紀。大屋根に"対峙するもの"として構想された太陽の塔は、ひとりでリングに立っています。ならば逆に、いま太陽の塔に対峙する建築・空間があり得るとしたら、それはいったいどのようなものなのか。若い才能に訊いてみたいと思いました。
 幸い、実施したアイデアコンペには150点の応募作品が集まり、審査員に五十嵐太郎椹木野衣藤本壮介という最高のメンバーを迎えることができました。
 本展では入選作をご覧いただくとともに、11月末にこの中から公開審査で最優秀賞を選びます。太陽の塔との真剣勝負、どうぞお楽しみください。

岡本太郎記念館 館長 平野暁臣

どんな作品が並んでいるかは、下記URLのほうが伝わるでしょう。
http://playtaro.com/blog/2015/12/01/

館内撮影自由でしたが遠慮してロングめで。これらは無論、第一にはアートなんですが建築計画的なコンペの要素も強く、作品自体のみならず、それぞれの理屈(あるいはヘリクツ)の通し方や、実現性に関する説得力(が無い作品もあるがそれも含めて)まで面白かった。

最優秀賞の「体漂の塔」は、もちろんそれ相応の作品なんですが、ただしこれ「登った人の9割は太陽の塔と対峙できないよ!?」というツッコミどころがある。なので注意深く見たり読んだりしたんですが、そのツッコミを回避する仕掛けもロジックも見当たりませんでした。基部が正円だから回転するのかと思ったけどそれも無し。

来館者には赤い丸シールが渡され、いずれかの作品に票を投じるよう求められます。私が選んだのは「パーフェクトエコー」。

太陽の塔が宇宙に浮かび、それを半径340mの球体で包む。
中心から叫び、すべての音がやまびこで跳ね返り、一点に集中すると、
爆発が起きるかもしれないという提案だ。

実現性もへったくれもないのですが、宇宙スケールに展開しつつ「対峙せよ」というテーマと愚直に向き合っていた感があります。

別室(第二展示室?)には選外となった応募作の一部も展示されていて、それも興味深かった。梱包芸術の亜流と言われりゃそうかもしれないけどシンプルで端正な「覆われた塔」(菅野凌、佐藤春花)、古代の出雲大社(の想像図)を思わせる大階段を築く「<太陽の塔>まで一歩一歩昇り詰めるプロジェクト」(駒村佳和、田中みずき)がお気に入り。後者は取って付けたブランコなんかでなく、エレベーターを設置してしまうナンセンス風味があればなお良かった。

その別室ではほかに…。

岡本太郎の「<太陽の塔>構想デッサン」等も展示。

ショーケースひとつ丸々構想デッサン。時系列は不明瞭で、デザインの流れがわかるわけではありませんが、太陽の塔の背景を考える上では極めて重要な展示と言えるでしょう。