夜行列車の存在意義

今年で(ていうか先日発車した列車で)寝台特急北斗星」が全廃だというので、最後に残った寝台特急サンライズ瀬戸」に乗る計画を立てていた。

東京発9月18日22時の列車に乗るつもりで、切符が発売される8月18日の12時過ぎに「みどりの窓口」へ行ってみたが、その時点ですべての席種が売り切れ。発売から2時間しか経っていないのに、大した人気である。……ってまぁ5連休の始まりに向けての便なのだから、これくらいは当然か。

ただ、既にホテルが予約済みで今さら日程は変えられない。復路は夜行バスの予約を取っており、シュミ的に言って夜行バス以外がいい。高松は微妙な近さで飛行機だと割高感がある……というわけで、新幹線「のぞみ」で岡山までいって1泊、快速シーサイドライナーで高松入りというプランに変更した。

問題はその料金である(運賃はサンライズでも新幹線利用でも同じ。券面は「東京〜高松」で岡山で途中下車扱い)。

サンライズ瀬戸には「ゴロンとシート」といって、料金体系上は「指定席」扱いの開放寝台(つまり寝台料金はゼロ)があって、その場合は運賃プラス3760円。

しかし「ゴロンと」は人気があってまず取れないし、ホテルとの比較という観点でも個室寝台を上げるのが妥当だろう。その場合、料金がいきなり跳ね上がって最低でも9720円(特急料金+寝台料金)。

対して、新幹線のぞみを利用した場合、岡山まで自由席で5820円(指定席だと6860円)。岡山でのホテル代は、カプセルホテルならボトムラインで2500円程度だが、私はアレは落ち着かないのでバス・トイレ付のビジネスホテルを予約した。3400円。合算で9220円〜10260円。

つまり、「サンライズ瀬戸・B寝台ソロ」と「のぞみ+ボトムラインのビジネスホテル1泊」はほぼ同額なのである。

となると、どうだろう? 個室といったって横になれるだけ、風呂もトイレもない、洗面台すらない、始終動きっぱなしの「寝台」と、いくら設備が古びているといったってれっきとした部屋であるビジネスホテルの一室とどちらが快適か。比べるまでもない。

目的地に到着する時間で比べても、サンライズ瀬戸は翌朝7時27分高松着。対して岡山で1泊した場合は、始発なら6時31分に着く。もちろん、急ぐ必要が無いならもっとノンビリ出かけたっていい。

東京発の時刻だけはサンライズ瀬戸22時00分、対して岡山まで行くのぞみの最終は20時30分でサンライズの「勝ち」ではある。だが、20時30分発ではNGで22時00分発ならOKというケースが果たしてどれだけあるか。

てなわけで、こうして比較してみると、夜行列車の価値はもう「それが夜行列車であること」のみとなっているのだった。まぁ、今さらな話だし、その価値がかけがえのないものなのだ、という気持ちもわかるのだが……。

これまで何度も夜行列車に乗ってきた経験で言うと、夜中は窓の外は真っ暗で何も見えず面白味は無い。夜明け前から朝にかけての時間は確かにロマンチックだが、7時くらいになるともうただの「日中」だ。時間帯と区間が合わないと大して気分は上がらない。

その点、今回の「岡山で1泊して始発で四国入り」だと、夜が明けたばかりの時間にちょうど瀬戸大橋を渡ることになる。日の出とともに海の上に架かる橋を渡る! 想像するだけでドキドキする(これで当日はどうせ曇りだったりしそうだが)。ロマンという側面でさえ夜行列車が優っているわけでもないのだった。ただ、念のため書いておくと冬至の頃であれば、サンライズ瀬戸が瀬戸大橋を渡る時間と日の出の時間が合うので、初めからそれを計算に入れて旅の計画を立てるのも趣味だろう。