「埼玉ふるさと散歩 大宮市」(1976)

今年の正月だったかな、宇都宮東武古書市でこんな本を買った。


『埼玉ふるさと散歩・大宮市』サンケイリビング編/秋葉一男執筆、さきたま出版会発行。購入価格500円、リアル店舗は川口にあるらしいしんり書房の商品。

はじめに
 
「さきたま」のどの森、どの村にも、数々の歴史とそのエピソードが残され、言い伝えられています。いま、人口の急激な増加によって日に日に開発が進み、歴史の痕跡は消え去ろうとしています。
(略)遠くは古代から、にぎやかに栄えていた江戸時代、近世まで、郷土に住んだ先人たちの足跡をたどって、その移り変わりを自分の目と足で確かめて見ようと、企画されたのがこの『埼玉ふるさと散歩』シリーズです。
(略)
サンケイリビング新聞社・前埼玉本部長兼編集長 田口早苗

というわけで。マァありがちなイラストマップ&史跡解説なんですが、今から40年前に書かれたものなんですねこれ(初出は昭和50(1975)年1月から12月にかけて「サンケイリビング埼玉版」連載)。さぁ果たして「歴史の痕跡」は消え去ったのか? 自分の目と足で確かめるため、この本を片手にちょっと大宮の町を訪ねてみた。
 
……結論から言うと、大方消え去っていた(苦笑)。
以下、実際の行程とは少々違いますが分かりやすさ優先で説明。

これはp23掲載、「<3>中山道大宮宿をしのぶ」の回のマップ。この、真ん中の道を下から上へ(中山道を北上)で言うと、まず安藤橋跡の碑は見つからず(現存するらしい)、橋本質店も屋号含めて見当たらず……。

塩地蔵はさすがにありました。ただ、『埼玉ふるさと散歩』に書かれた由来どおりなら、この地蔵堂のお地蔵さんはみな塩地蔵に相当するはずなんですが…。

なんという塩対応。
さらに北上、はす向かいの「旧与野道」は……。

取り立てて特徴のない路地。まぁ、『埼玉ふるさと散歩』の時点で既に「旧」だしね。与野と言っても、もちろん与野駅があるあたりではなく、与野宿のことでしょう(駅で言うと与野本町近く)。こんなどうでも良さげな道が、中山道の大宮宿と、中山道脇往還の与野宿とを結ぶ道だったというあたりに歴史のロマンが…感じられる、よね?
越中屋」「松本脇本陣跡」はいずれも現存せず。ただ……。

こんな感じで、道路拡張用地の提供を拒み続けるままボロンボロンの廃屋と化した家が一軒あるのですが、ひょっとして何か大宮宿としての歴史と関係あるんですかね。
その他、この地図に描かれた古い建物は大方無くなっています。いや、古い建物だけでない。「埼玉信用金庫」は今も地図に示された場所に、「大宮電報電話局」のあたりには今もNTTがありますが、いずれも建物は別の姿に。「大宮駅」もまったく変わっているなど、当時まだ新しかった建物も姿を残していないのでした。そんな中で高島屋はほぼこの形のまま残っているのがエライ。

別のマップ(<2>宿場町から34万都市へ・p19)を持ってきてさらに北上しましょう。……といっても、こっちも全く変わり果てており、あまり触れることがない。

中山道の交差点にもどり、北進する。この一帯の両側が旧大宮宿である。宿場の家並みは間口六間(12メートル)もしくは一二間(24メートル)、奥行六〇間(約120メートルで、ちょうど中山道と銀座通りの間に当たる)の短冊型に地割されていた。この屋敷地は建物が半分、残りが畑で、そのおもかげは街の中に見かけるケヤキの老木が語ってくれる。

と本文にはあるけど、ケヤキの老木なんてまず見かけない。
さて、マップ上で「内倉脇本陣跡」となっている場所ですが……。

今はこんな感じでフェンスに囲われ、中がどうなっているか分からない。ただ、表札は「内倉」を掲げていました。また、このフェンス右手にある「旅籠屋次郎」なるお店の軒先に、ここが本陣跡である旨が書かれています。
マップ上で「本陣稲荷」となっている場所には……。

それっぽい祠がありました。ただしこれ、写らないようにしましたがこれまたフェンスに囲われていてこれ以上近づくことができません。なのでこれがホントに本陣稲荷なのかどうかは不明。
てな具合で、書くべきことがほとんどない散策なのであった。ただ、この一帯に細い路地がやたら多いのは、実は宿場だった名残りだということがわかって、それは「へぇ」という感じ。

そんな中で、私自身は「発見した!」と思ったのがこのビル。「RAKUUN」ビルに「楽園」が入っていて紛らわしいな…とかそういう話ではなく。

これですね。RAKUUNビルの前身が西武デパートだというのは、ある年齢以上の地元の人には常識レベルなんでしょうが、イラストマップを頼りにこれを「発見」できたことがちょっとうれしい。
……。「ある年齢以上の地元の人」どころじゃないわ、この建物、割と最近まで(確かめたら2013年4月だった)大宮LOFTとして営業していたビルじゃないか。大宮東口にはほとんど行かないからピンとこなかった。

(参考)「Arthur's place」2013年04月21日付、「大宮ロフト、西武のこと」
http://blog.livedoor.jp/dennismoore1988/archives/52072084.html